第一章
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息を潜めて
そのUボートは出撃してだ、暫く経ってからだった。
目的地であるイギリス近海に入った、しかし。
攻撃対象である輸送船達はおらずだ、副長のペーター=ゴルトマン中尉は苦い顔で艦長のフリードリヒ=ヴァルター大尉に言った。
「駄目です、何処にもです」
「いないか」
「はい、どうやらです」
苦い顔でだ、ゴルトマンは整った若い顔で自分より少し年上の黒い目の大尉に言った。
「敵も気付きました」
「そうだろうな、何しろここでだ」
「我々はいつも潜んでいますから」
「そして攻撃をしているからな」
「向こうも気付いてです」
そしてというのだ。
「ここは避けています」
「そういうことだな」
「どうしますか」
ゴルトマンはヴァルターに決断を問うた。
「ここは」
「暫く様子を見るか」
ヴァルターは腕を組んだ姿勢でゴルトマンに答えた。
「今は」
「そうされますか」
「そうだな」
ゴルトマンはヴァルターにすぐに答えた。
「他の艦はどうしている」
「はい、どうやらです」
「まだか」
「この近海に残っていますね」
ヴァルターは潜望鏡から周囲の海を見回した、そこには望遠鏡が合わせて十程は残っていた。それでこうゴルトマンに言ったのだ。
「潜望鏡が十あります」
「そうか、ならだ」
「我々もですね」
「少し残ってだ」
そうしてというのだ。
「様子を見よう」
「わかりました」
「乗員は全員戦闘配置のままだ」
ゴルトマンは指示を出した。
「わかったな」
「了解」
ヴァルターは艦長の言葉に敬礼で返した、ナチスの敬礼で。
そしてだ、今はだった。
戦闘配置のまま待った、だが。
輸送船は一隻も来ない、それでだった。
ヴァルターは目を顰めさせてだ、ゴルトマンに言った。
「艦長、どうもです」
「そうか、一隻もか」
「相変わらずです」
来ないというのだ。
「どうやら本当にです」
「我々がよくこの海に来ることをか」
「察したみたいです」
「敵も馬鹿じゃないな」
「どうやら」
「そうだな、では」
「帰りますか」
「そうすべきか」
「望遠鏡ですが」
今海に出ているそれはというと。
「五つです」
「五隻帰ったか」
「帰ったのならいいですが」
難しい顔でだ、ヴァルターはゴルトマンに言った。
「最近増えていますからね」
「駆逐艦がな」
彼等の敵、連合軍のだ。
「それに最近は護衛空母もいるからな」
「ですね、航空機を出して」
「そうして襲って来る」
「駆逐艦だけでも厄介ですが」
「空から見られるとな」
余計にというのだ。
「見付かったら終わりだ」
「爆撃までされて」
「ことだ、空は大丈夫か」
「
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