暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ四十三 幸村の義その十四

[8]前話 [2]次話
「大坂の地も見ておられるとか」
「はい」
 その通りだとだ、幸村も答えた。
「そうしています」
「地を学ぶ為に」
「ああゆる地を知ってこそです」
「万全に戦える」
「ですから」
 この考え故にというのだ。
「そうしておりました」
「左様ですか」
「戦はその地も知ってこそなので」
「では大坂で戦になれば」
「大坂城だけで戦うものではないと思いまして」
「関白様の下で」
「はい、その時はです」
 まさにというのだ。
「大坂で戦うことも考えて見ておりました」
「お見事です、やはり」
「地を知ってこそですな」
「万全に戦えます」
「どの地でどうして戦うのか」
「それがわかりますからな」
 兼続も頷いて応えた。
「見ておられましたな」
「左様でした」
「では真田殿がおられれば」
 兼続は微笑みだ、こうも言った。
「関白様は安泰ですな」
「羽柴家の家臣でなくとも」
「少なくとも羽柴家の敵になるおつもりはありませぬな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「それは」
「では、です」
「関白様はですか」
「真田殿がおられれば」
 まさにというのだ。
「安泰ですな」
「ならいいですが」
「しかし」
「しかしとは」
「真田殿のお考えがわかる方ならいいですが」
「そうでない方ならば」
「そうした方が大坂城の主になられますと」
 その時はとだ、兼続は難しい顔で言うのだった。
「危ういですな」
「大坂城が堅固であるからと」
「それにのみ頼られる方ですと」
「はい、その時はです」
「まさにです」
「その時は敗れますな」
 例え大坂城にいてもというのだ。
「援軍のない城を囲めばです」
「もう負ける道理はありませぬな」
「間違いなくです」
 それこそというのだ。
「勝ちます」
「そうなりますな」
「どの様な城も」
「援軍なくして籠城すれば」
「攻め落とせます」
 確実にというのだ。
「何なりと策を使い」
「そうなりますな」
 こう二人で話す、そして。
 兼続は不意にだ、こんなことを言った。
「それでなのですが」
「それでとは」
「真田殿のお考えですと」
「それがしのですか」
「小田原城もですな」
「はい」
 幸村はすぐに答えた。
「確かにです」
「堅固であろうとも」
「援軍がなくです」
「囲まれれば」
「陥ちます」
 そうなるというのだ。
「あの城も」
「決して陥ちない城はありませぬ」
 兼続もこう言った。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ