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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十九話 イゼルローン要塞陥落後 
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なくなった。

最近勝ち続けているせいで、慢心したとしか思えん。後方で死ぬ危険が無くなったせいで呆けたか。自己嫌悪でどうにかなりそうだ。ラインハルトが個人の武勲に拘る阿呆なら、それを見逃した俺は輪をかけた阿呆だな。


■ 帝国暦487年4月28日     新無憂宮  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


また此処か。皇帝不予の時、俺とリヒテンラーデ侯、エーレンベルク元帥で打ち合わせに使った部屋だ。今日はシュタインホフ元帥もいる。どうやら侯のお気に入りの部屋なのかもしれない。

「ヴァレンシュタイン、何の用だ?」
シュタインホフが不機嫌そうに言う。こいつは相変わらず俺が嫌いらしい。無理もないがな。

俺には第五次イゼルローン要塞攻防戦でコケにされたし、それ以後も俺とミュッケンベルガー、エーレンベルクに押さえつけられたようなものだ。
「イゼルローン要塞が反乱軍の手に落ちました」

「馬鹿な何を言っている、ヴァレンシュタイン」
「元帥閣下、先程知らせが入りました。間違いありません」
俺の言葉にシュタインホフは絶句した。

「誤報ではないのか、ヴァレンシュタイン?」
「イゼルローンは難攻不落のはずだ」
リヒテンラーデ侯とエーレンベルクが口々に言葉を発す。

信じられないのも無理は無い。俺が驚かないのも原作知識があるせいだ。それが無ければ、俺も驚いていたろう。
「遠征軍、要塞駐留艦隊は敵に包囲され兵力の九割を失ったそうです」

「九割?」
「馬鹿な」
「……」

三人とも唖然としている。そうだろうな。俺だって最初聞いたときは呆然としたよ。
「小官が念のため、ローエングラム司令長官の後を追わせた三個艦隊から連絡が有りました。間違い有りません」

「ローエングラム伯はどうした?」
リヒテンラーデ侯が尋ねてくる。目が真剣だ。この老人ラインハルトの身を随分心配しているようだが、親しかったのか? そんな気配は無かったが。

「無事です。しかし、ゼークト提督、フォーゲル提督、エルラッハ提督は戦死、シュトックハウゼン要塞司令官の生死は不明です」
「ふん」
「?」

随分扱いが違うな。少しそれは酷くないか。
「何だ、その眼は」
「いえ……」

俺の非難がましい目に気付いたのだろう。リヒテンラーデ侯が面白くなさそうな顔をする。
「卿は分っておらんな」
「?」

分っていない?何のことだ?
「グリューネワルト伯爵夫人だ」
「?」
吐き出すように言った口調は決して好意的なものではない。

「ローエングラム伯が戦死したら、グリューネワルト伯爵夫人がどうなると思う?」
侯は俺を見詰め問いかけてきた。眼にあるのは嫌悪? それとも猜疑? 両方か。

「ローエングラム伯が戦死したら、です
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