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青砥縞花紅彩画
13部分:神輿ヶ嶽の場その三
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うつもりじゃ」
弁天「この弁天小僧、負けたとあってもじたばたしねえ。さあ一思いにやりなされ。そして香合を盗りなされ」
日本「負けたから死ぬと」
弁天「(頷いて)左様」
日本「(考えながら)ふむ」
弁天「さあどうぞ」
日本「いやはや、増々殊勝な心掛け、気に入ったわい」
弁天「それはどういう意味でござろう」
日本「他でもない、わしの手下にならぬか」
弁天「(ぎょっとして)何と」
日本「その腕前に心掛けいたく気に入った。頭分として迎え入れたいのだが」
弁天「頭分ってえと」
日本「そうじゃ、忠信と同じじゃ。これからはわしの手足となるがいい」
弁天「まことですかい」
日本「この日本駄右衛門、天下を股にかけておる、嘘は言わぬ」
弁天「それでしたら。(ここで頭を下げる)」
弁天「こっちもその強さと度量に感じ入りました。是非末席に加えて下され」
日本「よし、これでお主もわしが手下じゃ。これから宜しく頼むぞ」
弁天「へい(ここで懐に入れていた香合を出す)」
日本「どうしたのじゃ」
弁天「手下となったからには頭に差し出すのは道理」
日本「(首を横に振って)それには及ばぬ」
弁天「何故ですかい」
日本「手下となったからには手前の働き、貰うには及ばぬわ」
弁天「左様ですかい」
日本「うむ。それよりも連判じゃ。ここではちと暗い。場所を変えようぞ」
弁天「わかり申した」
 ここで二人は見得を切る。そして暗転。舞台が暗闇の中に。
 その間に切り替わる。川の側である。谷底稲瀬川の場に移る。
台詞「山の端にいつしか月も木隠れて、暗き谷間は鷲のほう法華経の声絶えて、紅蓮の氷解けやらぬ八寒地獄に異ならず」
 明るくなる。そこには千寿が倒れている。
千寿「(起き上がりながら)ここは」
 側に流れる川を見て言う。
千寿「三途の川?(そう思い辺りを見回す)」
 そこへ三人が左手からやって来る。見れば夫婦連れである。千寿は三人を見て起き上がる。そして声をかける。

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