第一章
[2]次話
ゴメス
ウガンダのミガ=アミゴはブガンダ族の青年だ。彼は今は家の中で祖父のアゴムの話を静かに聞いていた。
祖父は自分の若い頃そのままの顔の孫、細い目で痩せた顔それに縮れた髪と本当に真っ黒の顔を見ながら話していた。部族の中でとりわけ高い背も同じだ。
「わし等の頃は貧しくてな」
「今よりもずっとだよな」
孫はこう祖父に返した。
「貧しかったんだな」
「独立したてで戦争もあってな」
「確かあれだろ」
ここでミガは祖父にまた言った。
「大統領がな」
「アミンな」
「悪名高かったそうだな」
「まあな」
アゴムもそのことは否定しない。
「今も色々言われてるだろ」
「もう死んだんだろ」
「この国を追い出されてな」
「相当な人だったんだな」
「あの人も出てな」
それでというのだ。
「あとゴタゴタもあってな」
「それからもだな」
アミンのその後もだ、独裁者がいなくなってハッピーエンドで終わらないのはどの国でも同じことであるようだ。
「あってだよな」
「ずっと貧しかったんだ」
「そうなんだな」
「今はましになった」
「ましか」
「ああ、ましだ」
その昔よりはというのだ。
「まだな」
「それはいいことか?」
「いいことに決まってるだろ」
ましになったことはというのだ。
「それだけでな」
「そうなんだな」
「ああ、少なくとも御前は飯が食えるだろ」
「昔はそれどころか、か」
「そんな時もあったんだ、それと比べたらな」
「今はましか」
「少なくともわし等家族はな」
そうだとだ、アゴムはミガに話した。
「ましだ、学校も行けるだろ」
「まあな、そうそう俺な」
「またテスト満点だったんだな」
「大学まで行けるって言われてるよ」
「それなら行け」
是非にという言葉だった。
「頑張って勉強してな」
「偉くなれか」
「そうだ、なれ」
絶対にという言葉だった。
「戦争や餓えで死ぬよりずっといい」
「頭が破裂するまで勉強してもか」
「偉くなれるんだったらな」
「戦争だと喧嘩に強い奴が偉くなるんだな」
「何百人と殺した奴がな」
「それよりずっとましか」
「ましだ、後な」
アゴムはミガにこうも言った。
「結婚もしろよ」
「ああ、それか」
「大学に行かなくてもな」
そうなってもというのだ。
「結婚はしろ」
「絶対にか」
「年頃になったらな」
まさにその時はというのだ。
「結婚しろ、いいな」
「結婚な」
「御前も好きな娘がいるだろ」
「まだいないよ」
胡座をかいて身体を前後に揺らしつつだ、ミガは答えた。両手は組んだ脚のところにある。
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