9話 一夏戦
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のかな?」
その言葉に一夏は鳥肌が立つ。今の声は一体誰だ? いつもの落ち着いた感じでもない。教室で見せた怒りでもない。ピット内で見せた気圧されるようなものでもない。セシリア戦で見せたあの気迫でもない。
目の前にいるのが、今までの鬼一とは明らかにかけ離れた存在であることに、自身の考えを読み取られたことに、一夏は言いようのない恐怖を感じる。呼吸が僅かに浅くなり、背中に冷たい汗が流れる。ゴクリ、と唾を飲み込む。
織斑 千冬 更識 楯無 山田 真耶 セシリア・オルコット。そして月夜 鬼一。全員過去に何度も戦いに恐怖を抱いたことがあり、全員とも長い時間の鍛錬、もしくは経験でその感情を意図的にコントロールすることが出来るため、屈することはない。
鍛錬も経験も圧倒的に不足しており、考えを読まれた一夏は潰されてもおかしくなかった。いや、潰れそうになった。
だが、一夏はそこで1つの事実に気づく。その事実に僅かながらに恐怖感が薄れる。
―――違う。
―――ハッタリだ。
―――鬼一は気付いているわけじゃないんだ。
―――その証拠に、あいつは今、少なからずイラついている。もしくは迷っているんだ。自分の考えていた展開から外れて。
―――そうじゃないと、あいつは『小賢しい』なんて言い回しはしない。
まだ短い付き合いだが、それでも鬼一のことは知っている。それに―――。
―――最後の言葉は疑問形だった。あれは―――
一夏は結論を出す。結論を出せたことに平常心が少しずつ戻ってくる。
―――まだ、確信を得ているわけじゃないんだ。あれはこっちの反応を引き出そうとする言葉だ。
その考えに身体が軽くなる。浅くなった呼吸がゆっくりと平静に戻っていく。
そして、次の言葉に、一夏は悲鳴を上げそうになった。
「―――踏み込む気、ないな……?」
三日月の形に笑ったまま、言葉から感情が抜け落ちたまま、そして暗い光を宿した瞳から一切の光が抜け落ちる。ここまで人に無機質な声をかける、人を無機質に見れる人間を一夏は見たことない。そして信じたくなかった。人は、人はここまで自分を言葉に出来ない何かに変化できることに。
一夏同様、ピットで試合を見ていた千冬と真耶、楯無、そして実際に戦ったセシリアはその鬼一の異常さに気づいた。全員、本当に鬼一なのかと疑問を抱いた。同時に一夏とまったく同じ印象を持つ。
「っ!」
半ばそれは反射だった。
その恐怖感に耐え切れず、恐怖感を振り切るために一夏はついに踏み込む。一気に加速し、鬼神に切り込む。右腕に雪片を強く握り締め、大きく間合いを詰めて上段からの振り下ろし。
それに対し鬼一は笑みを濃くし、左手に持った夜叉を逆手
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