9話 一夏戦
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きかは鬼一も分からないクラスメイト。そして自分を守ってくれている隣の人。なにかあれば力を貸したいと思える存在。
今も、そしてこれからも、鬼一は戦い続けることを選んだ。
目を開く鬼一。
試合開始時刻になったのを確認し、スラスターを展開して外に飛び出した。
―――――――――
鬼一がアリーナに飛び立つと一夏は既にそこにいた。一夏とは10メートルほど距離をとって対峙する。
鬼一は既に『入っている』状態であり、いつ試合が始まっても対応できるようになっている。
それに対して一夏は迷いを抱えているような表情である。先ほどの鬼一の言葉が突き刺さっているのか、顔色が優れない。決心をしたのか一夏は口を開く。
「……鬼一、やっぱり俺は間違っていると思う。守るために誰かを犠牲にしなくちゃいけないなんて」
「……」
鬼一は何も反応しない。もう語ることは語ったのだから、あとは目の前の戦いに集中している。
「確かに鬼一の言葉は正しいのかもしれない。だけどそれは間違っているかもしれない。だって鬼一は諦めたんだろ?」
その言葉に僅かに反応を示す。
「……なに?」
「鬼一は戦うことでしか守れないって言った。でもそれは、それ以外の方法を諦めたってことだ」
一夏の言葉に鬼一の心が僅かに冷たくなる。
「もしかしたら他に誰も傷つかない方法が、戦いでも傷つかない方法があったかもしれない。でも鬼一はその方法を探そうとせずに、戦いは傷つけるものなんだって、鬼一は決め付けて諦めたんだよ」
―――お前に何が分かる。
熱を宿していた心が徐々に冷たくなっていく。
「俺は絶対に諦めない。守るために誰かが犠牲になるなんて間違っている。それはあっちゃいけないことなんだ」
―――僕は決め付けてなんかいない。僕がそれを考えなかったとでも思うのか? 誰が好き好んで傷つけないといけないんだ。どれだけ、どれだけ戦い続けてきたと思っているんだ。
鬼一は少しずつ黒く染まっていく。思考が塗りつぶされていく。今までの戦術が次々と塗り替えられていく。鬼一が忌名で呼ばれていた頃のそれに戻る。
「だから俺は負けない。鬼一の戦いを絶対に認めるわけにはいかない。それは許されることじゃないんだ」
「……」
鬼一が何かを呟き、内容は聞こえなかったが一夏は震えそうになった。理由はわからない。だが、この瞬間、鬼一は何かが変わった。
試合開始の合図がアリーナを満たす。
2人の戦いが幕を開けた。
―――――――――
2人の戦いは静かに始まった。
一夏は鬼一と違って理屈ではなく、肌で危険性を感じ取っていた。
確かに一夏は雪片しか武装がない以上、必然的
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