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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
9話 一夏戦
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離せよ。離せって言ってるだろ!」

「―――がぁ、っ!」

 鬼一は一夏の両手を力強く握りしめ、僅かに力が抜けたところに右足を一夏の腹部に全力で叩き込む。
 その衝撃に一夏は吹き飛ばされ、反対側のロッカーに身体を叩きつけられる。

「……僕やセシリアさんはもちろん、織斑先生だって例外ではありません。たくさんの人を傷つけ、蹴落として、安全圏の人間には理解できないほどの痛みや業を背負っているんです。きっと、自分にとって大切なものを守るためにそうせざるを得なかったんです」

 守るために戦えば何かが必ず傷つく。だけど守るために戦わずに家族の痛みや業を肯定して受け入れてあげて、癒して、誰も傷つかない、たった1人の家族を救う方法だってあるかもしれない。それを見つけ、生み出す権利を一夏は持っているのだ。そんな権利を持っていることに鬼一は羨ましかった。
 
 そこまで語って鬼一はもう話すことはないと言わんばかりに、更衣室から出ていく。少しだけ、心が軋んだような気がした。

―――――――――
 
 ピット内で鬼神を展開した鬼一は、静かに深呼吸を繰り返して自分の世界に入り込んでいく。近くには楯無が来ていた。様子を見に来たのだろうか。

「……たっちゃん先輩」

 様子を見ていた楯無に、鬼一は静かに語りかける。
 
「なにかしら?」

「……もし自分に誰もを、何も傷つけずに大切なものを守ることが出来るなら、先輩はどうします?」

 その言葉に意表を突かれたのか僅かに目を見開く楯無。
 だが、鬼一の様子があまりにも真剣だったため、それに対して真剣な面持ちで重く口を開いた。

「……それが出来るなら、って昔に何度も考えたわ。でも現実はいつだって残酷よ。戦う以外に、傷つける以外に守れる方法があれば誰もがその方法に縋ると思う。だけどそれをしようとする間に、考えている間に守ろうとするものが失うのが現実よ」

 楯無の脳内に守りたい人が浮かぶ。かけがえのない妹の姿。 

「考えている暇なんてない。私にだって大切なものがあるわ。それを守るためなら私は躊躇いなくこの身を差し出すことは、とっくの昔に覚悟しているわ。そしてたくさんのものを傷つけることにもね」

 そして、と続ける。

「いつか私はその罪に裁かれることも、人並みの幸せを受けれないことも分かっているわよ。私の業は間違いなくそれだけのものだから。だからせめて守りたい人には優しい世界にいてほしいと思うわ」

「……そうですね」

 鬼一はその言葉を聞いて静かに目を閉じる。

 自分を救ってくれたあの世界。

 自分を支えてくれるたくさんの人たち。

 そして、少しだけそこに新しく加わった。

 IS学園で出来た、仲間と言うべきか理解者と言うべ
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