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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
9話 一夏戦
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ずに鬼一は呟く。

「一夏さんは、守るために誰かが傷つくなんて間違っている、と仰いましたが安全圏にいた頃の僕もそう考えたと思います。だけど、現実はそうもいきません。これがその答えです」

「……!?」

 バリっ、と外される左の手袋。
 そして突き出される鬼一の左手を見た瞬間、一夏は言葉を失った。

 そこにあるのは5本の指。
 だけどその内の1本、人差し指が肌色のそれではなく鈍い銀色。所謂、義指と呼ばれるものが鬼一の指についていた。

「一夏さん、僕の言っている言葉は現実なんです。e-Sportsを守ろうとした僕は指を失い、下手をすれば対戦相手やその家族にまで脅し以上の被害が出たかもしれません。そこで気づきましたよ。戦うということは大なり小なり傷つけ、傷つけられるということを」

 鬼一は忘れない。あの痛みを。

「そして、僕はそれから戦うということを、何かを得るためには何かを失うことを知りました。もしかしたら何かを犠牲にしても何も得られないかもしれません。だからこそ僕たちは戦うということを、戦ってきた中で少しでも犠牲にしてきたものに報いるためにも。そして、勝負をするということを侮ってはいけないんです」

 今まで誰にも口にしなかった鬼一の勝負と戦いに対する考え方。鬼一は自身で言いながら、もう一度深く決心する。昨日のように勝負を侮るような考えは2度としないと。自分はこれからずっと長い間戦い続けることを選んだのだ。それから自分の意思で逃げることは許されないと。

「あなたの言葉に何も感じない、響き渡るものがない。その言葉は安全圏にいる人間のそれです。もし誰も傷つけたくない、傷つけられないというなら今すぐにISという力を捨てて、貴方の大好きなお姉ちゃんにでもずっと守ってもらうのをお勧めします」

「鬼一っ!」

 その言葉に怒りを爆発させた一夏は鬼一の胸ぐらを掴み上げながらロッカーに叩きつける。貴一と一夏の身長差は10センチ以上ある。必然的に鬼一の身体が地面から離れる。
 叩きつけられた痛みに顔をしかめながら、鬼一は一夏に語りかける。 

「……離してくれませんか?」

 その言葉が耳に入っていないのか、一夏は鬼一に怒声を叩きつける。

「俺は、俺は千冬姉を守ることに決めたんだ! それに誰かを犠牲になんてしない!」

「……離してくださいよ。その姉もあなたや他の何かを守るために自分を削って、数え切れないほどのものを犠牲にしてきたというのにそれからも目を背けようとするんですか? それなら織斑先生には心底同情しますよ。その痛みを家族に受け入れてもらえないなんて」

「―――!」

 手に力が入り鬼一にかかる圧迫感がより一層強くなる。その圧迫感に鬼一も我慢しようとは思わなかった。

「……
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