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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
9話 一夏戦
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 見、である。

 ―――徹底的に守りを固めて一夏さんの様子を探ってそこから攻略のヒントや、一夏さんの動きや考えの傾向を深く探ろう。短絡的な考えや動きは即負けに繋がるな。

 ガチャ、と音を立てて更衣室に入ってきたのは一夏だった。どうやら一夏も着替えに来たらしい。

「一夏さん、おはようございます」

 自身の疲労を探られないようにいつもと同じテンションで喋り、いつもと同じように身体を動かす鬼一。

「あ、あぁ、鬼一か。おはよう」

 どこか戸惑った様子の一夏はロッカーの前まで歩き、準備を進める。

「? どうしたんですか一夏さん?」

 鬼一にとってはここからが既に対戦になっている。前哨戦と言い換えても良い。プロゲーマー時代もこうやって対戦相手と話して、お互いの状態を図ることはよくあった。あわよくばここから攻略のヒントや戦略を決める手助けになることもある。そして自分の弱さを露呈しない。徹底的に普通と同じように振舞う癖が身体に染み付いている。それこそ意識しなくてもだ。

「……なぁ、鬼一」

「なんでしょうか?」

 俯き、準備の手を止めて、一夏は絞り出すように鬼一に問いかける。

「鬼一の戦いは本当に凄かった。どれだけ考えたらあれだけのことが思いつくのか俺には分からない。だけど……」

 そこで1度言葉を止めて、深呼吸する一夏。

「あんな、勝ち方しか出来なかったのか?」

 その言葉に鬼一の思考は一瞬止められた。

「……どういう意味ですか?」

「……どうして、あんな風に人を、女の子を傷つけるような真似してまで勝ったんだ?」

 その言葉に鬼一は考えた。鬼一からすればそもそも戦いの場に男も女もないし、戦いを行う以上必ず誰かが、何かが傷つくというのは至極当たり前のことであり、一夏の言葉の意味が本当に分からなかった。
 着替え終えた鬼一はロッカーに腕を組みながら背中を預ける。

「……戦いの場に男も女もないですし、そもそも僕は勝利手段を選ぶほど強くないですから」

「だからと言って、傷つけていい理由にはならないだろう!?」

 鬼一の感情の乗っていない言葉にイラついたのか、声を荒げて鬼一に向き直る。

 そんな一夏の様子を冷めた目で見ながら鬼一は答える。

「……何を勘違いしているかは知りませんが、僕は大切なものを守るために全力を尽くしただけですし、その結果人を傷つけることになったとしても受け入れることにしています」

 そもそも、と続ける。

「僕もセシリアさんも沢山の何かを勝ち得るために数え切れない何かを切り捨て、傷つけてきました。そして、僕たちは自分たちが傷つくことになったとしてもそれはそれで構いません」

 自分たちにも守るものがあり、他の誰
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