9話 一夏戦
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ら退くことは出来ない。ただ、目の前にいる敵を倒すことに全てを注ぐ。
足に取り付けられた小型スラスターが火を噴き、振り上げられた左足が強引に軌道を変更され一夏の右側頭部を打ち抜く。揺さぶられる脳。ブラックアウトしかける意識はISの保護機能と、受けた痛みを超える気合いで無理矢理支える。
ブレる視界を気にせずに一夏は迷わず後ろに飛ぶ。今の鬼一は明らかに先程と違うことを身を持って知ったからだ。そして一夏自身も自分が限界に近いというのを悟った。鬼一のそれとは違って直感的ではあったが。
一夏自身もほとんど気づいていなかったが、鬼一によって様々な形で体力を消耗させられていたのだ。
序盤の鬼一の不気味さから来る恐怖。それにより精神と集中力を削られ、不必要に体力を使わされてしまい、レール砲の砲撃による激痛がスタミナを蝕んだ。
中盤は鬼一の猛攻を受け続け、そこからの逆襲で鬼一を削ることも出来たが自身の体力も削ることになった。
そしてこの最終局面。鬼と化した鬼一の膨れ上がったプレッシャーに挑むこともそうだったが、セシリア戦と違って体力と集中力を問われる近接戦が多くなることで、更にスタミナを削られた。
鬼火を展開した鬼一は、一夏を逃さんと言わんばかりに襲いかかろうとした。ポテンシャルが全て引き出された今、鬼一は先手を取り続ける自信がある。一夏の呼吸と顔色から心理を読み取り、筋肉と骨格の軋む音さえも感じ取れる今、一夏の行動を全て『先読み』出来る。
鬼一のいたe-Sportsでは電脳世界を通じて、モニターの向こう側の相手の心理を読み取っていた。だが、直接顔を合わせて戦っている今、より深く鮮明な情報を得ることが出来た。これが鬼一の先読みを強く支えていた。
「っ!」
だが、一夏のセンスは鬼一の神がかった力を嘲笑う。
鬼一と違い戦いにおける経験値が圧倒的に不足している一夏は、自分と相手の状況を客観視できないため、戦術と対策を組み上げることはできない。だから感覚的に感じ取った情報から大雑把に答えを導き出す。
極めて厄介なことにその大雑把な答えは、
―――正解なのだ。
離脱した一夏を見て、鬼一は追撃を断念した。残り2発のレール砲を直撃させることは難しいと判断し、そして前に踏み出そうとした右足が崩れ落ちそうになったため、鬼一も後ろに離脱する。
疲労はあくまで誤魔化しているだけであり、決して無くならない。今の鬼一が出来ることは、疲労をこれ以上相手に悟られないようにするだけだ。悟られたらそれこそ敗北に直結する。
―――なら、その疲労を補えばいいだけのこと。
距離を空けた両者は深く、深く、落ち着くように深呼吸する。
両目を見開いた一夏は全速力で斬り込む。白
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