9話 一夏戦
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可な反応などあってないようなものだ。
しかし、それはあくまでも操縦者の危険性を顧みなければのことだ。ボロボロの鬼一の身体にリミッター解除は到底耐えることはできない。つまり―――。
―――『死』が待っていてもなんの不思議でもないのだ。
鬼一からすればそんな心配などいらなかった。鬼一の心は既に目の前の敵に焦点が合わさっている。故に考えることは敵の絶殺のみである。そしてその先にある『勝利』のことしか考えられない。試合で迷うことなどありえない。答えは既に出ているのだ。ならば、その答えに到達するために死力を尽くすだけのこと。
そして楯無とセシリアからすれば、そんな愚行を見逃すことはできない。全力で鬼一を食い止める。楯無からすれば苦悩の果ての責任感。セシリアからすれば両親の死と並ぶ、理解者、友人の死。鬼一から恨まれるかもしれない。だがそれは絶対にあってはならないことなのだ。
楯無が管制塔に目を向ける。こんな状況、気がついていたら千冬も真耶も止める。だが2人は管制塔のモニターで状況を確認しているのだ。実際に見るよりもモニターに映し出されている情報の方が少ないのだ。鬼一の行動に気づいていないことだって考えられる。それに気づいた楯無は全力で駆け出そうとした。ここからでは管制塔に連絡出来ない。ならば直接向かうしか方法はない。楯無は駆け出そうとして、自分の足が動かないことに気づいた。セシリアも自分の身体が動かせない。
2人の視線はアリーナ中央に注がれる。鬼一から発せられる何かが2人をそこに留まらせた。この2人が動けるようになるのはこの戦いが終わってからとなる。
そんな2人を余所に、鬼一と一夏の戦いは続く。
リミッター解除した鬼火から青みがかった紫色のブーストが噴出される。鬼一が高速で動くたびに紫が尾を引く。通常のISでは決して行えない挙動。この尾がユラリユラリと揺れるたびに一夏は、視線で追いかけるがそこには鬼神の姿はなく、気がつけば踏み込まれている。
「く、っそぉおおぉおっ!」
零落白夜を起動した一撃が鬼一に振られる。
右から左への一閃。鬼一ではどうしようもない不可避の一撃。
避けることはできない。だが、『軌道』をズラすことはできる。
鬼一の左足が振り上げられる。その蹴りは一夏の指先を穿つ。強引に軌道を変えられた一撃はそのまま鬼一の鼻先を過ぎていく。
「っ!?」
鬼一と一夏の視線が交差する。
片や、勝利をもぎ取るために全てを犠牲に出来る者。
片や、唯一の家族を守るために剣を握ることを覚悟した者。
まったく違う2人だが、胸に宿る答えはただ一つ。
―――勝つんだ!
―――俺は負けねえ、勝ってみせる!
互いが互いにこの戦いか
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