9話 一夏戦
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以上にこの局面になって再度対策を練りなおさなければならないこの状況に、精神が悲鳴を上げ始めていた。
もう、一夏は痛みに恐れない。前に出ることに躊躇いを抱かないという事実、そして攻撃力が削られても最後まで攻めの姿勢は崩さない。
―――……それが、どうした。
だが、それでも、鬼一の集中力は衰えない。
この程度で崩れるような精神なら彼は、1つの世界の頂点に14歳という若さで立つことなどあり得ない。光を宿さない瞳はさらに黒く染まり、底なし沼のようなどこまでも飲み込んでしまいそうな恐怖を宿す。
「―――っ、ぐ、ぁあ!」
ここまで執拗に攻められた右腕が激痛という形で一夏の身体に襲いかかる。だが、それにもう怯まない。勝つためには乗り越えなきゃいけない痛みなら、乗り越えると。そう雰囲気から伝わってくる。
―――負けねえ。
一夏の気迫が鬼一の肌を焦がす。スラスターを吹かし鬼一に突撃を仕掛ける一夏。鬼一は幽鬼のようにユラリ、と立ち上がると折れた夜叉で迎え撃つ。
「ぐ、あぁああ!」
「……っ!」
ガキィン、と2つのブレードがぶつかり合う。その衝撃に一夏は筋肉が断裂しそうな痛みを刻み込まれ、鬼一は疲労からブレードを支えることが出来ずに吹き飛ばされる。だが鬼一も勝てると思っていなかったからか、すぐに鬼火、スラスターを展開し勢いを利用して距離を取ろうとする。
だが目の前の男はそれに食らいついた。
「うおおおおおおおっ!」
「……!?」
全速力で再度踏み込んできた一夏は雪片弐型で鬼一を薙ぎ払う。
かろうじて反応できた鬼一は夜叉でガードするが、あまりのパワーにぶっ飛ばされ、今度はスラスターを展開することも出来ずに壁に叩きつけられる。もはやスラスターを展開するだけの体力もないのか、そのままズルズルと地面に崩れ落ちる。
「通常よりもワンテンポ遅れる攻防。いつもの鬼一くんよりも動き出しが遅いわ……身体をコントロールできていないのよ。そんな状態ではタッチの差を競う近距離戦はあまりにも厳しい。必然的に勢いを利用して離脱を図るけど……」
「それを織斑さんに読まれて踏み込まれてしまっています……」
「……鬼一くんもあの様子だともう限界。まだシールドエネルギーそのものはリードしているけど、彼の未来のためにもこの試合はここまでよ」
立ち上がった楯無はそのままピットに向かう。教師2人にこの試合を止めてもらうために。楯無のその言葉にセシリアは声を荒げる。
「お待ちくださいませ! まだあの人の戦いは終わっていませんわ!」
セシリアの制止に楯無も苦い顔を隠せない。本人も理解しているのだ鬼一はそんなことを望んでいないと。IS学園で誰よりも近い位置で鬼一を見てきた楯無
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