9話 一夏戦
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こうしたんだ。でもなんでだ鬼一? なんでお前はこんな人を傷つけるような形でしか戦えないんだ。
―――戦うということは大なり小なり傷つけ、傷つけられるということを。
さっきの鬼一の言葉が頭から離れてくれない。それは今でもおかしいと思う。間違っていると思う。何かを助けるために戦うのに、どうして傷つけなくちゃいけないんだ。人に痛みを強いるなんておかしい。なんで最後まで傷つけない方法を探さなかったんだ鬼一。昨日だって、そして今もこれだけの力があるのになんでそんな形でしか使えないんだ。お前ならもっと別の方法があったんじゃないのか?
暴力を振るわれたり、指を失ったことは本当に理不尽だし怒りだって覚える。俺だってそんなこと許せないよ。でもさ鬼一。俺よりも年下で痛みを、理不尽を知ったお前だからこそ他の誰にも真似できない、たった1つの方法を探して見つけることが出来たんじゃないのか? 誰も傷つけない方法だっていつか見つけられたんじゃないのか?
痛みに痛みを返して、そうやってずっと繰り返していたら誰も喜ばないし、すげえ悲しい。それで守れたとしてもそんな自分に胸を張れるのかよ鬼一。
無機質な笑みを浮かべた鬼一がブレードを逆手に持ち、勢いそのままに突っ込んでくる。薙ぎ払うように振るってくるブレードを飛んで避けようとしたが、それもダメだった。飛んだ瞬間、右足を鬼一が掴んでいたからだ。次の瞬間には思い切りアリーナの壁にぶん投げられていた。
背中から叩きつけられてほんの数秒、呼吸が止まる。
「―――っ、が……はぁっ」
さっきから頭痛がひどい。頭の中に鐘があるみたいだ。
―――その姉もあなたや他の何かを守るために自分を削って、数え切れないほどのものを犠牲にしてきたというのにそれからも目を背けようとするんですか? それなら織斑先生には心底同情しますよ。その痛みを家族に受け入れてもらえないなんて。
違う。俺は千冬姉の為ならどんなことだってやれる。どんなことだって受け入れられる。そこまで考えて気づいてしまった。
違う。千冬姉は確かに自分から何をしているか話さなかった。ISのことを話さなかったり俺が知ることも認めてくれなかった。千冬姉は知られることが怖かったんだ。自分が沢山のものを傷つけてなくしてしまったことを、俺の負い目にさせたくなかったんだ。
ガリっ、と音を立てて歯が欠けた音が聞こえた
違う。なんで俺は知ろうとしなかったんだ? 俺は知ろうと思えば知ることだって出来たはずだ。誰よりも一番近いところにいたのに。たった1人の家族なのに。千冬姉が隠したがっていることを、負い目になっていることを知ろうともせずに、その痛みを知ろうとせずに何が守るだ。
そうか……。だから鬼一は怒ったんだ。あいつは家族
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