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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
9話 一夏戦
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リビリと痺れるような痛みが右腕を襲う。その痛みに表情が苦痛に歪み、悲鳴が体の底から溢れそうになる。
 グラリと揺れる身体。そして隙を逃さずレール砲が再度火を噴く。肘に撃ち込まれる楔。減少するシールドエネルギーなど気にもならない。人を壊す痛みだけが右腕から脳に伝達する。

「ああああああっ! っ……うぅ!」

 一夏の悲鳴がアリーナ内に木霊する。その悲痛な叫びはこの試合を観戦している女生徒たちの身体を震え上がらせるものだった。
 だがそんなことを気にせずに鬼一は笑ったまま追撃に移行する。その笑みは見ているものからすれば只々不気味で肌寒さを覚えさせた。

 力が入らなくなったのかブラン、と垂れ下がる晴れ上がった右腕。ダメージをカットされている以上、容易に折れたりはしないが、一夏はそれを気にしている時間はない。目の前には鬼が斬り込んできているのだ。残った左腕で雪片弐型を握りしめる。だが利き腕が思うように使えなくなった今、練習していない左腕だけで目前の相手を凌ぎ切ることは困難だ。今の鬼一は一夏の事情など知ったことではない。ルール内に則った手段で戦っているのだ。その結果、相手がケガを負ったとして今の鬼一からすれば何も感じることはない。故に全力で仕掛けてくる。

 ISには操縦者のコンディンションを整える機能があるが、それとて限度はある。時間が多少あれば右腕も充分使えるようになるだろう。だから鬼一はそんな時間も与えない。自分の優位を活かして一方的に攻め続ける。そして一夏を受身にさせることで、攻めるチャンスを与えない。

 絶対防御を発動させる一撃が一夏に襲いかかる。

「―――くぅっ!?」

 利き腕の右腕に比べて思うように操作できない左腕での防御。その様は稚拙の一言に尽きる。上から夜叉を叩きつけられ雪片弐型が左腕から離れて地面に突き刺さる。
 この瞬間を持って、一夏の攻撃力の無効化に成功した。そして一方的な戦いが始まる。

――――――――――――

 何度目か分からない鬼一の打突に絶対防御が発生し、紙切れみたいに吹き飛ばされる。もう身体に力が湧いてこなかった。抵抗しないでこのまま終わるまで嬲られるのだろうか―――。ブレードの一撃を避けると、ボディブローが腹部に打ち込まれる。

 「ごふっ!」

 耐え切れず吐きそうになる。いてえ、IS戦ってこんな痛いのかよ。チラリ、と右腕を見てみると、青く晴れ上がっていて本当に自分の腕なのかと思う。痛みを超えてもう痺れきっているから動いてくれない。
 俺は迂闊だったんだと思う。なんとなく近い距離での戦いはヤバイ、と思っていたけどそれは間違っていなかった。

 鬼一は最初から俺の右腕を使えないようにするために戦っていたんだ。俺は右利きだし剣道をしてたから、鬼一は何もさせないように
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