9話 一夏戦
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には夜叉を振りかぶった鬼一が眼前にまで来ていた。
先ほどとまったく同じ表情で。
「くそ!」
震え上がる心と身体にムチを打ち、全速力で態勢を立て直す。
両腕で持ってはいるが実質左腕1本で持っている雪片で防御しようとし、レール砲の銃口の向きが視界に入った瞬間、とっさに雪片をもった左腕で右腕を庇った。先ほどの一撃が、脳裏にこびりついていた。
だが、それこそが鬼一の狙いだった。
「……じゃあ、こっち」
右腕を庇った一夏を見て、鬼一はそのまま夜叉を力任せに白式に叩きつける。
今度は絶対防御が発動し大きくシールドエネルギーを削られてしまう一夏。
「ぐ、あああぁあっ!」
地面目掛けて叩きつけられ、視界が反転し一直線に落下する。今度はスラスターの展開すら出来ずに地面に打ち付けられる。ズゥンっ、アリーナが衝撃に震える。
一夏が地面に落下していくのを眺めていた鬼一は追撃に入らない。鬼一は追い詰められた際の最後の力がどれだけ脅威的か、過去の試合で身を持って知っている。だからリスクを背負わず少しずつ少しずつ削ることにした。
鬼一は一夏がIS初心者、そして剣道に身を置いていたことがあるという事実を踏んだ上でこの戦術に『変更』した。
剣道は両手で竹刀を持って行う武道である以上、片腕を封じられただけでも大きなハンデになることを利用したのだ。そして昨日のセシリア戦では、ほとんどが右腕での雪片弐型を使用だったので右腕を封じただけで、一夏は剣道や昨日のような戦いは出来ない。
もし、これが織斑 千冬のようなスペシャリストなら右腕をなくそうが左手1本でも十分なパフォーマンスを維持しただろう。片腕が使えなくなった程度で戦えなくなる剣士が頂点を取れるはずもない。
だが一夏はIS初心者である以上、左腕も右腕も同じように使えるはずがない。それを行うには長い時間をかけて鍛錬をしなければならないからだ。
『少しずつ攻撃力と選択肢を削り、状況を打開するための思考と体力をなくし、最後に心まで折ってしまえばどれだけの強者であろうが関係ない』
そこまで行ってしまえば、人などただのゴミでしかない。
鬼が忌名で使われていた頃、鬼一はこの考え方で数多くのプレイヤーを潰してきたのだ。
――――――――――――
セシリアと楯無の2人が観客席の一番上で話していた。
元々は楯無がセシリアに興味があったことと、鬼一という共通の知り合いがいたから話しかけてみた。
2人は自己紹介をそこそこに、試合を見ていた。
「……織斑さんは迷いましたわね」
ポツリ、と小さく語りかけるように呟く。
その言葉に頷く楯無。
「鬼一くんは自分が初心者だと理解しているわ。だから膨大
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