9話 一夏戦
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ISの機能で全ての衝撃や痛みをカットすることは出来ない。だが言い換えればカットされることで破壊を防ぐことができる。
基本シールドエネルギーを削ることがメインのISの武装がほとんど、いや全てであり、操縦者に対するダメージに特化された武装など誰も使わない。いや、使えない。なぜならIS操縦者にISの機能を経由せず『直接』ダメージを与える装備は、競技規定違反に繋がるので利用できないのだ。
だが鬼一はそこに目をつけた。
そして今回レール砲に装填されている弾丸は通常のものではなく、操縦者に直接ダメージを与えることはできないが、カットされてなお通常よりも上回る肉体的ダメージを与える弾丸。そしてそれがISを経由してIS操縦者に撃たれたらどうなるか?
データ取り、という名目で渡されたこの弾丸を鬼一はただ保管していた。それを使うより他にすべきことがあったから。
2つの弾丸の内1発が一夏の右腕、手首と肘の間に刺さる。
ミシっ、と一夏の右腕から嫌な音がする。
鬼一は知っている。
想像を絶する痛みに直面したとき、生半可な集中や思考など紙切れのように吹き飛ぶことを身体で理解している。
砲弾が直撃した一夏は大きく後ろに飛ばされるが、すぐにスラスターを展開して体制を立て直す。シールドエネルギーを確認してみたら多少削られていたが、絶対防御が発動したわけではないので大きく減っているわけではない。
よし、まだやれる、と考えたのも束の間。
人は理解できない痛みに直面したとき、最初それがなんなのかに気付かない。
「……っあっ、ぐぅ!?」
鉄のハンマーか何かで思い切りぶっ叩かれたような鈍痛が右腕に走る。強い内出血が起きたのか大きく腫れ上がったそれを見て混乱する一夏。熱の塊が右腕で大暴れしているような熱さと一瞬、全ての思考を奪い去るほどの痛み。
ぶるぶる、と雪片を握る指先が急激に震え始め、慌てて左手で雪片を支える。脂汗が顔面に吹き出る。あまりの痛みに涙が目尻に溢れる。
―――……なんだ、これ!? なにが、起きたんだ!?
一夏は昨日のセシリア戦で、IS戦についてはなんとなく理解していた。IS戦で痛みや衝撃があることやいざというときにはシールドエネルギーを大きく削り、絶対防御が自分の身を守ってくれることを。
シールドエネルギーが少ししか減っていないのに痛みだけが大きく反映されている事実に、一夏は混乱を深める。あくまで絶対防御は生命を守る最後の防衛戦だということに気づかないから。
痛みに苦しむ一夏のその様子を見て、鬼一は初めてこの戦いで攻撃に転じた。
「っ、くっ!?」
反応を示すアラートが一夏の耳に飛び込んでくる。
一夏が視線を自身の右腕から、正面に向けた時
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