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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
48.金狼
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、脚が完全に治りきっておるまい?でなければ足を使ってもっと早く動き、儂を翻弄したじゃろう。ティオネもそうじゃ。動きを見切っていても足が付いてこなかったからクロスカウンターになった。違うか?」
「………………」
「大人しく捕まらんか、悪餓鬼め。お主は死に体で歩くのがやっと。しかしこちらにはそのうち戻ってくるであろうフィンも含めて戦力多数。お主が持っていた剣は折れておるし、何よりお主の拳では儂を止められん。大人しく地上まで引きずられて、傷を直してもまだ行きたいのなら勝手に――」

 瞬間、オーネストが再びガレスの腹を殴った。

 しかし、先ほどとまるで動きが違う。腰を低く、手を放つと同時に大地を貫くように足を地面に叩きつけ、全身の運動エネルギーを全て乗せたような拳を全身でねじ込んでいた。先ほどの握りしめた拳ではなく、手の形は掌底。今度は金属音ではなく、ドウンッ!!と大気を揺るがす音がした。

 だが、それと全く同時にガレスの腕がオーネストの肩を掴む。全くの手加減なしにギリギリと握られた肩の周辺の傷が開き、血が噴き出る。オーネストはその激痛をまるで意に介さないように更に拳を叩きこもうとして――直後、後頭部に杖が叩きつけられた。

「ぐっ、あ……――」

 ガレスは――先ほどのクロスカウンターのように態とオーネストに体を殴らせ、その隙をついてオーネストを動けないように拘束していた。その隙を、このファミリアのもう一人のレベル6――『九魔姫(ナインヘル)』のリヴェリアが突き、弱点を正確に殴り飛ばされたオーネストは意識を失――わず、脚を地面に叩きつけて堪えた。

「………ッ!!」
「この……お前の為なのだ!とっとと眠らないか!!」

 もう一撃、リヴェリアの杖が寸分狂わずオーネストの首筋に叩きつけられ、今度こそ膝から崩れ落ちる。その手の指が、がりり、と地面を引っ掻いた。

「くそ……が………俺は、誰も………」

 倒れ伏して尚、周囲に凄まじいプレッシャーを振りまいて地面を這いずるオーネストの狂気に、今度はリヴェリアも気圧されて引きそうになる。――それが最後の抵抗だった。オーネストの纏うプレッシャーが消え、そこには気を失った血塗れの少年が残った。

「まったく、大暴れしてくれたものだ……まさかあの体でここまで被害を受けるとは、誤算だった。一人でこんな階層にいたことといい、何なんだこの子供は……とにかく、もう一度医療テントへ運んでくれ、ガレス――ガレス?」
「………すまん、儂も不覚を取っての。怪我人……追加じゃ」

 オーネストの意識が完全に途切れたのを見届けた後、ガレスはその場に膝をつき、激しく咳込んだ。鎧はオーネストの血が付着した以外無傷そのものであるにも拘らず、何故――アイズは目の前の光景が信じられなかった。


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