48.金狼
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く変貌させながらも引かない。
自分たちが態々助けた怪我人なのだ。死ににいくために助けた訳ではないし、助けたからには絶対に治ってもらう。錯乱して黒竜に向かおうとする彼の大仰な「自殺」を止められないのでは、威厳に関わる。
「5日ぶりの運動の途中すまないが、もう一度眠っていたまえ!!」
オーネストが再び走り込むと同時に、フィンは彼の顔面に向かって槍を放った。常人なら決して見切れない神速の突き――しかし、勿論殺すためのものではない。顔面に当たる直前でフィンは手先を微かに手繰り、軌道を逸らして槍の腹でオーネストの首筋に一撃を叩きこもうとした。
ほぼ前触れのないモーションからの急加速、彼の超人的な戦闘能力が生み出す必殺級の一撃。しかも、正面からの攻撃に見せかけて視線を集めつつも突然視界から消えるような挙動で相手を混乱させる下準備までしている。一撃で昏倒させる為の、少なくともアイズからすれば完璧な動きだった。
彼の首筋を叩こうとした槍の腹が、オーネストに鷲掴みにされるまでは。
「僕の動きに、反応した――!?」
「がぁぁぁぁぁああああーーーッ!!!」
それは戦士としての本能が不幸にもそうさせたのか、槍を決して離さぬよう握り込んでいたフィンは、槍ごと瞬時に虚空に投げ飛ばされた。いくらフィンの身体能力が高くとも、小人族の彼は絶対的に重さがない。その弱点を突いた動きだった。どれだけの力が込められていたのか、フィンは通常では考えられない程遠くまで吹き飛んだ。
だが、そのモーションが生み出した隙はを突くように黒髪の冒険者が拳を掲げてオーネストの前に立つ。その形相は正に『怒蛇』の名に相応しく、オーネストに負けず劣らず怒り狂っていた。
「人の妹と団長に……何してくれてんだクソガキぃぃぃぃぃッ!!!」
片思いの相手と妹に手を出されて怒髪天を突いたティオネ・リュヒテが、風を斬って拳をフルスイングした。後にレベル6に到達するアマゾネスの拳は、魔物すら殴り殺す。その拳が何の手加減も直線で、無防備なオーネストの顔面に突き刺さった。
ドグチャァッ!!と、人間の身体が立てるとは思えない生々しい衝突音が響き、ティオネのストレートパンチがオーネストを貫く。頭が消し飛んだのではないかと錯覚するほどに、重い一撃だった。
「かっ……あ………?」
なのに、呆けた様な声を挙げて倒れ伏していたのはティオネの方だった。
気付けば自分が地面に叩きつけられていた、と彼女は思っただろうが、アイズには見えていた。
彼女の拳の命中と全く同時に、オーネストの拳がティオネの顔面を容赦なく叩き潰し、ティオネが地面に叩きつけられてバウンドしていた。彼女が呻いたのは、バウンドして地面に叩きつけられてからだ。
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