48.金狼
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した瞳はこの世とは違うどこかを見つめているかのようだったが、不意にその目がはっきりと自分の手を握るティオナを見た。あれほどの重傷を負っておいて、4日で意識が戻るなど――いや、それ以前に手の施しようがなかった腕が完全に骨格を取り戻していることもまた、衝撃だった。
だが――事はその直後に起こった。
オ―ネストは呆然と、自分の手を握って覗き込むティオナを見て――まるであらゆる負の感情が爆発したような歪んだ声色で、こう言ったのだ。
「また俺は、逝けないのか――なんでいつもいつもこの世界はぁぁぁぁあああああーーーーーッ!!!」
包帯塗れで寝そべった体勢のまま、濁流のような激情に駆られたオーネストの手が真横に振られ、ティオナの身体が紙切れのように吹き飛んでテントを突き破った。避けたり声をあげる暇もなかった。
もう、その姿は彼が人であることを忘れさせた。
鬼という言葉すらも生ぬるい殺意の塊が、怨嗟のような咆哮を上げる。
「ぐぅぅ……ぁあああ………!!がぁ゛ぁ゛ぁぁああああああーーーーーーッ!!!」
頭を?き毟りながら立ち上がる、まるで理性を感じない暴走した獣。纏わりついた虫を掃うように頭から強引に引き剥がされた包帯の中から、潰れていた筈の血走った眼球が現れる。塞がりきってない傷口のうち大きなものからは再び血が噴き出て、彼の身体を紅く染めていく。
体はボロボロなのに、戦闘に必要な部分だけは完全に治りきっていた。アイズはそのまま彼がテントを突き破って獣のように疾走するのを見るしかなかった。
「……意識を取り戻したばかりで錯乱しているのかな?」
彼の声とは対照的に落ち着き払った少年の声。ティオナが吹き飛ばされたことを真っ先に察知した『勇者』、フィン・ディムナが槍を構えて彼の行先に待っていた。
「黒竜はどこだ……殺す……そこを………どけぇぇぇッ!!」
「どかない、よっ!」
獣のように荒々しく、しかしすべてが相手を殺す為の殺意を込めて振るわれる拳。しかし、フィンにそんな無骨な攻撃は届かない。全てが躱され、或いは槍で弾かれて捉える事が出来ない。
弾丸のように放たれたオーネストの拳をいなしながら、フィンが問いかける。
「落ち着くんだ、君。そんなに慌ててどこに向かう?君の身体はまだ戦いに耐えられるほど回復していないし、武器もないんだよ?」
「退かないのなら、死ねぇッ!!!」
「やれやれ……聞き分けのない子だ、折角助かったばかりだというのに、キツめのお灸が必要かい?」
「――そうか、お前が邪魔したのかぁぁぁーーーッ!!!」
暴走する感情を更に爆発させたオーネストの怒声が、まるで物理的な衝撃波のように周囲を揺るがせる。アイズは無意識に後ずさったが、フィンはその目つきを鋭
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