第三章
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「この人じゃないな」
「あの人でもないな」
「美人は多いけれど」
「三十代か」
「あの人は二十代だろ」
「この人は十代後半だぞ」
「四十代だろうな」
その市場にいる美人達を見て口々に言う。
「違うな」
「ああ、そうだな」
「三十代の美人さんな」
「街の爺さんが言う」
「爺さん達が噂するからには相当美人だろうがな」
「そのことは間違いないな」
実際にというのだ。
「枯れた爺さん達がそうだとな」
「やっぱり美人だよな」
「それも相当にな」
「もう恋愛とは縁のない爺さん達が噂し合うからにはな」
「美人だぜ」
「それも相当にな」
「だったらなこんなものじゃないな」
それこそというのだ、そして。
その中でだ、ふとだった。
ラシッドははっとした顔になってだ、こうシャドルに言った。
「爺さん達が噂していたな」
「ああ、そうだよ」
「爺さん達だよな」
言うのはこのことからだった。
「だったらな」
「それの話は今してるだろ」
「違う、爺さん達は古いよな」
このことからだ、ラシッドは言うのだった。
「服の趣味とかは」
「長生きしてるだけにな」
シャドルも友の言葉に頷いた。
「そうだな」
「そうだろ、だから今の人達の服には注目しないだろ」
「ということはな」
「あれだよ、ハイクだよ」
ラシッドはここぞとばかりに言った。
「ハイクを着てる人じゃないか?」
「ハイクか」
「ああ、そうだよ」
それだというのだ。
「それを着てる人だろ」
「ハイクをか」
「ああ、そうだろ」
「それだとな」
ラシッドのその話を聞いてだ、シャドルは言った。
「もうハイクを着てる人も少ないからな」
「着てる人は着ててもな」
「肌を見せる人も増えてるな」
「昔に比べたらそうだな」
アルジェリアでもというのだ、イスラム国なので女性が人前で肌を見せることは原則としていけないことであるがだ。
「ラフになってな」
「欧州の影響で」
「俺達の同級生なんてそれこそな」
「ハイク着てる娘なんていないし」
「古風な人は着てるけれど」
「三十代の人だったらな」
「まだ着てる人もいるか」
「三十代でハイクの人」
「その人を探すか」
二人でこう話してだ、そのうえでだった。
ハイクを着ている三十代の人を探した、四十代五十代の人はいるが三十代となると中々だった。そしてだった。
その中にだ、白いハイク二メートル四方の大きな布を頭から被って身体を完全に覆い隠し口元をラジャールという顔布で覆い下はアラビア伝統の広いズボンを穿き黒い靴の女性がいた、右目だけをヴェールから見せている。
その人を見てだ、ラシッドはシャドルに言った。
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