Side Story
少女怪盗と仮面の神父 16
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二人の間をひらりと擦り抜け、派手な色彩は瞬く間に黒闇へと消えてしまった。
「……すみません。不快な思いをさせてしまいましたね」
マーシャルが去った後、暫く自身の額を押さえて俯いていた神父は、顔を上げるなりミートリッテに腰を折った。
「いえ……」
確かに、根拠が見えない駄目出しを喰らって不快になりかけたのは事実だが。
それより
(あの人も……悲しい目をしてた)
誰も幸せになれないと口にした瞬間、マーシャルの瞳の奥で揺らいだ翳り。
ミートリッテは、その瞳を七年前に見た記憶がある。今も、ずっと傍に居る。
(……ハウィスだ。性格はともかく、あの人の色彩も顔立ちも声も雰囲気も全部、ハウィスに似てるんだ。でも、それだけじゃない。やっぱり私、あの人を知ってる気がする。本人には全然見覚え無いのに……)
「神父様。あの人、最後に何て言ったんですか? バーナベアレ……とかなんとか。聞き慣れない発音でしたけど、中央大陸で使われてる言語じゃないですよね?」
彼女がハウィスに似ていると気付いてしまったら、訳が解らない「とても親切な忠告」やら「見てない気付いてない」発言にも深い意味があるんじゃないかと考えてしまう。知人だと言う神父に手掛かりを求めてみるが、アーレストは苦笑いで首を横に振った。
「私にはお答えできません。その……とても繊細な対応が求められる内容なので」
金色の眼差しがちらりと窺ったのは『僕達何も見てません』の姿勢で見張りを続行している自警団員二名。
彼女がアーレスト神父の知人だったから良かったものの、そうじゃなく怪しい人物だった場合、間違いなく懲罰ものでしょう。それでよく仕事してますって開き直れるね? と嫌味を込めて其方を睨めば、二人共慌てて顔を逸らした。
……減給されれば良いのに。
「ですが、ミートリッテさんはあまり深く考えないほうが良いと思いますよ。彼女は見たままの性格ですから、男女関係の話題も遠慮無く振ってきますし……正直、私も少々気疲れしました」
自分街道まっしぐらなアーレストが、女性を相手に気疲れするとは珍しい。
そういえば……観察していた限り、女衆に囲まれてる間は大体同じ口調で同じような笑顔だったのに、マーシャルには随分声を荒げて複雑な表情を見せていた。彼女に対して苦手意識でもあるんだろうか。
いや。それより、ちょっと待て。
「男女関係って。まさかとは思いますけど、彼女のあれ「私が神父様をどうこう」な話じゃないですよね?」
「さ。夜道は危険ですし、そろそろ帰りましょうか。貴女に何かあっては大変ですからね」
「へ? ちょっ! 神父様!?」
神父の手がミートリッテの肩を掴んで、くるんと向きを変えさせた。転けない程度の力で背中を押し、中央広場から北へ向かって真っすぐ伸びる階段
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