第二章
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「そうなるのか」
「お母さんみたいになれたらいいでしょ」
「まあな、料理上手でいい母さんだしな」
「ケンテ作るのも得意だし」
「御前今何言った」
娘の言葉を聞いてだ、ドグモは。
急に真顔になってだ、娘にそのうえで問い返した。
「何て言ったんだ」
「?お母さんが料理上手だって」
「違う、その後だ」
「お母さんがケンテ作るのが得意だってこと?」
「それは違うぞ」
言う間も手は動いている、魚を網から出し続けている。
「ケンテはな」
「違うっていうと?」
「ケンテは母さんは作っていないぞ」
「じゃあ誰が作ってるのよ」
「俺だ」
今はシャツにズボンという動きやすくラフな格好の娘に言った。白いシャツと青のジーンズの格好は男の子の格好と同じだ。
「父さんだよ」
「えっ、そうなの」
「ケンテを作るのは男の仕事だぞ」
「初耳だけれど」
「というか知らなかったのか」
「ええ、本当にね」
「全く、学校の勉強のことは知らなくてもな」
ドグモはマサカのそれは仕方ないとしてさらに言った。
「世の中のことは知っておけ」
「そうするわね」
「ああ、とにかくな」
「ケンテは男の人が作るものなのね」
「家だと父さんだ」
自分を指差して言う。
「母さんのも御前のも父さんが作ってるんだ」
「そうだったのね」
「全く、それで今度新しいケンテを作ってやるがな」
「今度はどんな柄のケンテなの?」
「まだ内緒だ」
言わないというのだ。
「楽しみに待っていろ」
「そうするわね」
実際にそうするとだ、マサカも答えた。
「楽しみに」
「そうしていろ、じゃあまずはな」
「ええ、このお仕事してね」
「母さんの家事を手伝うんだぞ」
「勉強以外なら何でもするわ」
「全く、御前だけは俺に似たな」
勉強嫌いなところがというのだ。
「兄さん達は勉強が得意なのにな」
「一人娘の私だけはね」
ついでに言うと末っ子でもある。
「勉強嫌いね」
「変なところだけ似るな」
「お兄ちゃん達は顔はお父さん似でね」
ドグマも細い苦味ばしった皺の多い老け顔にだ、背は高くひょろりとした感じであり手足はかなり長い。額の広さが目立つ。
「皆将来禿げるわね」
「そう言う御前も禿げるぞ」
「お父さんの子供だから?」
「御前は禿げなくても御前の子供は禿げるぞ」
「嫌な話ね」
「覚悟していろ」
こんなことも言うドグマだった、マサカとそうした話もしながら仕事をしていた。そして漁師の仕事以外にもだ。
ケンテの仕事もしていた、その中で。
彼は家の中でマサカにだ、こう言った。
「いいか、今作ってるからな」
「それでなのね」
「ああ、出来たらやるからな」
だからだというのだ。
「楽しみにしていろ、い
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