第一章
[2]次話
ケンテ
アフリカには様々な国がある、ガーナもその中の一国だ。チョコレートで有名な国であるが。
マサカ=ンガモはガーナの首都ラウチにいてだ、そこから海を見ながら父のドグモに言った。
「お父さん、私の家は漁師だけれど」
「ああ、それがどうしたんだ?」
「ここに来る人絶対にチョコレートのことを言うね」
「ガーナっていうとだからな」
ドグモは娘にこう返した。
「チョコレートだからな」
「それでなのね」
「ああ、そうだ」
まさにというのだ。
「皆そう言うんだ」
「ガーナはチョコレート」
「そうな」
「そうなのね、ただ」
「うちは漁師だ」
実際にだ、彼は自分の網から魚達を獲りつつ応える。マサカは貝類をそうしている。
「この通りな」
「何でもチョコレートじゃないわよね」
「ああ、それとな」
「それと?」
「この前日本人に会ったがな」
「あの東の方のアジアの国ね」
「野口英世がどうとか言ってたな」
「誰、それ」
その名前を聞いてだ、マサカはこう問い返した。
「一体」
「日本のお医者さんらしいな」
「日本人なのね、その人も」
「俺は勉強しなかったから知らないが」
「私も学校の勉強嫌いよ」
「それでもだ、その人はこっちでも有名らしいぞ」
「ガーナでも」
マサカは父に問い返した。
「そうなの」
「みたいだな」
「私はじめて聞いたわよ」
「というか御前本当に学校で勉強してるか?」
「だから私勉強嫌いよ」
このことについての返事は決まっていた、黒い肌に短い縮れた髪と黒い大きな瞳、小さなピンクの唇に小柄な身体は可愛らしい。だが。
学校の勉強についてはだ、こう言うのだった。
「スポーツは好きでもね」
「男の子みたいなこと言うな」
「いいじゃない、だってお兄ちゃん達が皆頭いいから」
「御前はか」
「スポーツ出来るからね、あとお料理もよ」
「勉強が出来なくても生きていけるか」
「実際お父さんもそうでしょ」
父自身のことも言った。
「勉強嫌いだったって今言ったじゃない」
「漁師に必要なことは学校の勉強じゃないんだ」
ドグモもはっきりと言った。
「こうしてたな」
「お魚の獲り方ね」
「そうだ、別に学校の先生やお医者さんになる訳じゃないんだ」
「お魚をどう獲るかは」
「学校の勉強とは違うんだ」
それも全く、というのだ。
「またな」
「そうよね、だからね」
「御前も勉強しないんだな」
「これからもね」
「全く、男みたいなこと言うな」
「お料理も出来るからいいじゃない」
「じゃあ母さんみたいになるのか」
マサカの母でありドグモの妻である、言うまでもなく。
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