第三部
名誉と誇り
さんじゅう
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ツヴァイハンダーを振って血糊を落としているのは、フォウと呼ばれていた女傭兵である。
その側らには、上下に体を両断された豚面鬼が転がっており、はみ出た臓物から生々しく湯気が立ち上っていた。
他にも、ところどこでいまだ戦いの音は鳴り響いており、仲間である傭兵団員がいまだ生きている4匹の豚面鬼を相手取っていた。
「アイツら、まーだ相手してんのか……。ったく」
いくら傭兵団が数で豚面鬼を圧倒しているとはいえ、全員が全員で一斉に攻撃を打ち込める訳もない。
むしろ、豚面鬼1匹に対して、騎士3名で取り組むような相手を、たった1人で、それも歯牙のも掛けずに討伐するガルドとフォウが異常なのだ。
それを分かっているのか分かっていないのか、そんなことを言い放つガルドに、フォウは嗜めようと口を開きかけ、結局苦笑いをするだけで発することはなかった。
何故ならば、「おらぁ、テメェら! 俺が殺るからどいてろぉ!」と、スキンヘッドの大男が大槌を頭上に掲げて駆け足で豚面鬼へ突っ走って行ったからに他ならない。
「まったく、うちの団長は面倒見が良すぎるな」
「いやぁ、ありゃ溜まったもんを豚面鬼相手に発散してるだけでさぁ」
ひょいと、木から音もなくピピンが降り立つ。
声を掛けられるまで物音どころか、気配すら感じさせずに現れた小男に対し、フォウは内心改めて戦慄を覚える。
彼女自身、『餓狼団』の一員として多くの修羅場を潜ってきた。女伊達ら、ツヴァイハンダーの重さを物ともしない剣捌きと、その技量にはそれなりの自負もある。事実、客観的に見ても誇れるものであると言えた。
更に言えば、実力者がひしめき合う中、団員数200人を要する規模の『餓狼団』内において、幹部としてその籍を置いているとすれば、その実力は折り紙つきと言える。
その彼女の実力を持ってしても、このピピンという男の視野の広さと身の軽さにはほとほと舌を巻く。
そのピピンはと言えば、大槌を豪快に振り回しながら、残り1匹となった豚面鬼へと駆けていくガルドを見やって「災難でさぁ」と、並びの悪い歯を見せて微笑いを漏らしていた。
「にしてフォウの姐御」
「だからその姐御はやめろ」
フォウの顔には何度目だといったような、辟易としながらも半ば諦めも混じった表情で訂正をピピンへと求める。
「……旦那?」
「縦か? 横か? 感謝しろ、選ばせてやる」
もちろんそれは縦に真っ二つか、横に真っ二つかである。
ちなみに左右の袈裟斬り、および突きはない。
「おぉ、こえぇこえぇ」
そう言いながらも、ピピンは並びの悪い歯を見せてカラカラと笑う。
これもよくある光景のひと
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