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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十六話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その2)
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司令室が沈黙に包まれる。スクリーンに映っていた軽巡の一隻が火球に包まれた……。目の前で味方が撃沈された……。
「砲戦用意!」
主砲の発射準備を命じつつ、敵の規模を確認する、五千隻ほどか。おそらく分艦隊だろう。敵はもう直ぐ要塞主砲射程内に入ってくる。そのときは思い知らせてやる。自分の心の中で怒りが煮えたぎるのが分かった。
敵は要塞主砲の射程寸前で停止した。敵も馬鹿ではない、突っ込んでは来ないか。
悔しさを押し殺してスクリーンを見詰める。軽巡が要塞管制室からの誘導波に従って港内に入った。敵艦隊も回頭し要塞から離れ始める。
とりあえず一息つける状況になったと言っていいだろう。問題は司令長官とゼークトだ。どうなっている。
「司令長官と駐留艦隊はどうなったと思う、意見のあるものは述べよ」
「……」
誰も答えない、いや答えられない。あの軽巡の様子を見ればどう見ても司令長官率いる遠征軍は敗北したとしか思えない。問題はゼークトだ。彼は敗北したのか、それとも未だ司令長官を探しているのか。
未だ司令長官を探しているのなら、至急イゼルローン要塞に戻さなくてはならない。要塞は危機的な状況にある。敵は思ったより大軍のようだ。要塞だけでは守りきれない……。
「閣下、軽巡の艦長が至急会いたいと……」
「此処へ連れて来い、早く!」
部下の言葉をさえぎって命令した。少しでも外の状況が知りたい。
十分程待たされて司令部のドアが開くと頭部に白い包帯を巻いた少壮の士官が現れた。美男子だが、青ざめた顔が乾いてこびりついた赤黒い血に汚されている。部下が五名ほど付いている。いずれも負傷している。余程苦しい戦いをしてきたのだろう。
「艦長のフォン・ラーケン少佐です。要塞司令官にお目にかかりたい」
「シュトックハウゼンだ。事情を説明しろ。遠征軍は、司令長官はどうなった? 駐留艦隊は間に合わなかったのか?」
私は彼に近づきつつ質問した。
「駐留艦隊など何処にも居ません! 我々は不意を突かれ……」
「待て、こちらの送った警告は届かなかったのか?」
恐れていた事が起きた。やはりあの通信は届かなかったのか……。
ラーケン少佐が怒りに満ちた表情で近づいてくる。目の前に立ち、いきなり苦しげに蹲る。
「どうした、少佐。しっかりしろ」
慌てて彼を助け起そうとした瞬間、衝撃と共に床に倒されていた。ラーケン少佐の腕が首に巻きつき頭に何かを押し付けられた。
「何をする」
「こういうことです。シュトックハウゼン閣下。貴官は我々の捕虜だ!」
「馬鹿な、貴様、叛徒どもの仲間か、あの軽巡は」
「ああ、あれは無人艦です。お見知りおき願いましょう。ローゼンリッターのシェーンコップ大佐です」
不敵な響きを持つ男の声が、私の心を敗北感に染め
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