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IS 〈インフィニット・ストラトス〉 〜運命の先へ〜
第28話 「乙女のツケは高くつく」
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好しなら誘拐された自分を責めるはずだ。
(だが腑に落ちない・・・。)
一夏や千冬さんではない、ボーデヴィッヒが分からない。あいつは一夏と戦う理由があると言った。率直に考えれば、それはこの不戦敗事件だろう。千冬さんの歴史に敗北の結果を刻んだ一夏という存在を憎悪する。形振り構わず千冬さんを説得するほど慕っているんだ、当然あり得る。
『おーい、れーくん?もしもーし?』
だがボーデヴィッヒは「一夏を認めない」と言った。あれは「許さない」とか「憎い」とかそういう次元ではない気がする。一夏という存在そのものを否定しているのだ。生半可な気持ちじゃないはず。
『れーくんってばー。ねー聞こえてるー?』
仮に俺の想像以上にボーデヴィッヒが千冬さんを慕っていたとしても、千冬さん自身には微塵も影響していない過去のために特定の存在をあそこまで否定するようなクレーマーになれるものだろうか?況してや学園転入まで一夏という存在をほとんど知りもしなかったであろう人間が。
『おーい、れーくーん?束さんおこだよー?そろそろ返事してくれないと束さん拗ねちゃうぞー?』
俺は憎悪という感情をよく知らないが、無理なんじゃないだろうか。何かあるはずだ。もっと根深い、もっと個人的な、ラウラ・ボーデヴィッヒという存在に関わる根源的な原因が・・・。
『・・・もうっ!れーくん!』
「うわっ。」
束さんの大声で思考の迷路から解放される。おっと、すっかり自分の世界に入り込んでしまった。目の前の束さんは頬をプクーッと膨らませて拗ねている。何これ可愛い。
『そのすぐ考え事しすぎて周りが見えなくなる悪い癖直した方がいいって、束さん言ってるよね?忘れたのかな?』
「いえ、滅相もございません・・・。」
ヤバい、これガチの説教する時のトーンだ。脱線どころか正座してお小言を聞かなきゃいけない。流石に面倒なので本題に入って食い止めよう。後は食べ物で釣る。これ最強。
「お説教は今度帰省した時に聞きますから、本題を聞かせてください。ね?またご馳走作ってあげますから。」
『・・・むぅ。はぐらかされた気がするけど、まあいっか。えっとね・・・。』
束さんが話し始める。今夜は少し働かなきゃいけないだろう。夜はまだまだ終わらない。
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