第三部
名誉と誇り
にじゅうきゅう
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て釣れた。
更に有り難いことに、『エリステインの捕縛』という、任務を請け負っていることも判明した。
いまこの段階を以て、人族に対する私の目的の8割は遂行できたこととなる。
では、残りの2割であるが、それは……。
「よぉ、お嬢ちゃん。大人しく捕まってくれれば、その辺で覗き見してやがる悪趣味なヤツのこたぁ、この場では聞かねぇよ」
さあ、どうする? と、肩に担いだ偃月刀を弾ませながら顎をしゃくる。
エリステインは、事も無しに言って退けるヴァルクムントに一瞬目を見開くが、予想はしていたのだろう。すぐに平静を保った顔へと戻した。
「その前に、1つだけお聞きしたいことがあります」
「あん? 俺に答えられることか?」
「……それは、わかりません」
ヴァルクムントは、自身の顎を撫でながら一度考え込む素振りを見せた後、顎をしゃくって先を促す。
「スタイン総隊長とその取り巻きの騎士に、私は命を狙われました。その所為で私の部下が1人……、命を落としました」
「……なんだと?」
流石のヴァルクムントも眉を寄せて訝しむ。
「本当なんだな?」
「剣に誓って」
そう言ったエリステインの言葉に、一層眉を寄せて難しい顔を作るヴァルクムント。
小山のような厳つい大男がそんな顔をすれば、例え自身に非がなくともビクついてしまうのは仕方がないことだ。現に、エリステインは額に玉のような汗をかいていた。
「……にしてもお嬢ちゃん。国王から下贈された、その肝心の剣がねぇようだが?」
にやにやとからかうように言って退けるヴァルクムントの言葉に、エリステインは自身の左腰に目を落とし、わたわたと狼狽し始める。
「ここここれはですね、森でっ! 森で遭遇した混沌獣と交戦した際にですね……っ!」
私は思わずヘルメットの上から額を手で覆い、首を振る。
「分かった分かった。冗談だ、そんなに慌てるこたぁねぇよ」
くつくつと笑いを抑えながら、ヴァルクムントはひらひろと手を振ってエリステインの言葉を遮る。
ヴァルクムントは一度大きく息を吐き、エリステインを真っ直ぐにみる。その表情は先程までエリステインをからかっていた嬉々とした色は消え、真剣そのものだ。
「その森で遭遇した混沌獣だが、スタインの餓鬼んちょが報告に上げていたヤツだな?」
「はい……。間違いないかと思います」
「よく生き残れたな。俺ぁ、そこにいた部隊は全滅したと聞いていたもんでな」
その言葉に、エリステインはビクリと肩を震わせて口ごもると、どうしたものかと視線をさ迷わせる。
こっち見んな。
まあ、私の存在はヴァルクムントにバレているわけだし、変に隠
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