暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百九話
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 そうして頭を下げるテッチに対して、俺たちは何も言うことが出来なかった。会って数ヶ月の自分たちとは違う、ずっと一緒に過ごしてきたのだろう、恐らくはスリーピング・ナイツを代表しての言葉に――俺とアスナは、黙ってお互いの顔を見つめると、どちらからともなく頷いていた。

「分かった。でも何かあったら、相談してくれ」

「……ありがとうございます。わがままなお願いを」

 顔を上げたテッチの目線の先には、キリトと話すユウキの姿があった。どうやら最近はスリーピング・ナイツと行動することが多い、アスナについて話しているらしく、何やら共通の話題で盛り上がっているらしく。それを見定めたアスナも、少し頬を朱に染めながら割って入っていく。

「ちょっと! キリトくん、ユウキ!」

「ゲームの中でも……色々大変なんですねぇ」

「……確かに」

 ……そう呟いて弱々しく笑みを浮かべるテッチの姿が、酷く印象的だった。ただ楽しく遊べればいいものを、どんな人物にも色々な問題が山積みだ。そんなゲームらしからぬ現実に肩を落としていると、そんな肩にポンと優しく手が置かれていた。

「なーに辛気くさい顔してんのよ。せっかくのライブ後にさ」

「リズ、ルクス……」

 テッチもまたユウキたちの方に歩いていき、代わりのように二人の少女が姿を現した。どうやら心底『辛気くさい顔』をしていたらしく、リズに背中を叩かれて無理やり笑顔を作っておく。

「ふふ。ライブ、ショウキさんはどうだった?」

「熱気が凄かったな……まるで現実みたいだった」

 そんな様子を見ながらクスリと笑っていたルクスに、ライブの感想を正直に伝えていた。あてどなく転移門まで歩きながら、確かにね――とルクスは俺の感想を肯定する。

「私は現実のライブも行ったことがあるけど、同じような熱気を感じたよ」

「もう現実もゲームも同じなのかもしんないわねぇ……なんて、こんなこと言ってると、また学校でカウンセリングね」

 ついこの前の正月明けにやった身としては、もうしばらくはカウンセリングを受けたくない身としては、リズの冗談めかした言い分には苦笑しか出ない。そうしていると突如、先程まで聞いていたセブンの歌が、再び空間を支配するように鳴りだした。

「すまない。私のメッセージの着信だ……音量設定間違えてたかな……」

 ピクリと止まったメンバーにペコリと謝りながら、ルクスはこちらに背を向けるとメニューを開きだした。ウェーブのかかった銀髪から覗くエルフ耳が赤く染まっていて、今は着信音の設定を直しているのだろうか。

「でもいいわねぇルクス。VRとはいえ、ファンがアイドルに直接会えるんですもの」

 さっき言った通り、現実と変わらないなら直接ね――と、そんなルクス
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ