四十九話:変動
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っただろう。しかし、プレシア・テスタロッサはフェイトとアリシアを無意識のうちに同一視するように見てしまった。だから違いが浮き彫りになった。自分を呼ぶ声が異なると錯覚してしまった。元々違うのだから違って当たり前だと言うのに。
「我々は共に製作者からすれば不出来な粗悪品だ。望まれたことを成せぬガラクタだ。それは私達だけではない。世界には周囲から望まれぬ生き方をするしかできぬ人間はいくらでもいる。例えば……君の子ども達のようなね」
そう言ってスカリエッティが指を鳴らすとある光景が画面に映し出される。それは地上にて戦闘機人達と戦っているフォワード陣の姿。正確に言えばフェイトの子どもであるエリオとキャロが無残にも敵に屠られている姿であった。
「エリオ! キャロ!」
「この子達は本来であれば愛ある親の元で育つはずだった。しかし、少年は偽物であるとして実験所に捨てられた。また、少女は強すぎる力を持って生まれたが故に災いをもたらすとして捨てられた」
子どもには親を選ぶ権利もなければ好きな才能をもって生まれてくることもできない。生まれ落ちた時点でレールが敷かれている。自分で道を開くことが出来ると人は言うだろう。しかし、赤ん坊の時から親の庇護下から抜け出るまでに自分で道を開ける子どもは居ない。
子どもの世界は狭く、その中心にいるのは常に親である。その神とも呼べる存在が子どもを否定すれば世界から否定されたもの同じだ。そこから立ち直れる子はフェイトのような特殊な例ぐらいであろう。
「彼らに非があったのか? そんなことがないのは君も良く知っているだろう。ただ、彼らは特定の生き方しかできなかった。だというのにそれが周囲に望まれなかった故の悲劇。私ならばそのような非合理的な価値観は作らないのだが……今の世界では認められなくてね」
スカリエッティの言う合理的な価値観とは実力のあるものならば何をしても良いというもの。人としての倫理観の外にある行為も肯定すること。普段のフェイトであれば絶対に許容しない。すぐに否定していた言葉だった。しかし、今の彼女にはできなかった。エリオもキャロもその生まれが、存在が“異質”であったために疎まれ、排除された。
逆に言えば彼らが異質でない、非合法な生まれが肯定され、巨大な力が必要とされる世界ならば二人は捨てられることなく穏やかな生活を送れていた。こんなふうに痛めつけられることもなかった。そう思ってしまうと否定することが出来なかった。彼女も人の親であるために。
「変えようじゃないか世界を。我々のような者が胸を張って生きていけるような世界にしようじゃないか。勿論、あの子達も一緒だ」
「……それは脅しと取っても構わない?」
「くくくく、そう聞こえるかね。そう思うのならばそう思うがいい。ま
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