四十九話:変動
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心の底から尊敬の念を表すように語るスカリエッティ。しかしながら、その顔はどうしようもないほどに歪み、酷く、楽しそうであった。彼にとっては全ての欲望は愛でるべき美しいもの。それが大きければ大きいほどに見物する喜びは上がる。
元々は優しかった人間が悲劇をきっかけとして人の道を踏み外して落ちていく。しかも、どれだけ落ちても最後の最後まで変わり果てる前の願いを抱き続ける。それ故に苦しみは増していき心は壊れていく。それでも希望を求め最後の最後に絶望して流す涙はさぞや美しいだろう。
「人でなし……あなたは人間なんて何とも思っていない…!」
「失礼だね、私は人を愛しているよ。全ての娯楽は人間が作り出した物でしかない。ならば人間とは最大の娯楽であるはず。それ故に私は敬意をもって彼らの命を弄ぶ。それが私にとっての愉悦なのだから」
周りの人間を人間として認識せずに弄ぶ人間は多くいる。だが、彼は違う。人間を愛する者として、愛するがゆえに汚し、冒涜し、弄ぶ。歪みきってはいるが彼の愛だけは本物だ。娘達とて必要となれば利用する人間だが、娘が死ねば声を上げて泣くほどの愛も兼ね備えている。彼は誰よりも人でなしで、誰よりも人間らしい。
「狂ってる……」
「確かにそうだろう。私は狂った目的を成すためだけに創り出された存在。ならば狂っているのが普通だ」
「創り……出された?」
予想だにしなかった言葉に思わずスカリエッティの顔を凝視する。その顔は特に気にしたふうでもなく楽しそうに笑っており、未だに自分の生まれに対して思うところのあるフェイトには眩しく見えた。同時に犯罪者相手にそんなことを思ってしまった自分に嫌気がさし目を伏せる。そんな様子すら面白そうに眺めながらスカリエッティはさらに語っていく。
「ああ、そうか君は知らないのだね。私もね、君のように創り出されたものだ。世界に平和をもたらすという狂った願いを叶える為にね」
最高評議会が世界を平和にするための技術を生み出すべく創り出した古代技術の遺児。アルハザードというおとぎ話より生み出された智の怪物。それこそがジェイル・スカリエッティ。だが、怪物は人の指示などには決して従わない。その非をフェイトは叫ぶ。
「……じゃあ、どうしてその願いと反対の行動をしている!」
「おや、それを君が言うかね? 母親に望まれたにもかかわらず―――アリシア・テスタロッサになれなかった君が」
冷たい黄金の瞳が彼女を見下ろす。その冷たさは彼女に在りし日の母の瞳を思い出させた。死んだ娘を生き返らせるためにクローンを創り出し記憶を植え付けた。それでも死者を蘇らせるなど人間の力では不可能で、結局別の人格が生み出され似ても似つかない別の人間が生まれた。
別人だと素直に認めることができれば憎むことはなか
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