第百八話
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よ。まだ店員NPC配置してないし、店番頼む」
「ああ」
あの世界と違っていつでもプレイヤーがいる訳にはいかないので、諸雑務を引き受けてくれる店員NPCが必要だったが、どうやらその設定はまだらしく。かく言うこちらもリズが来てからの予定のため、了承しておくとエギルはログアウトしていった。
「……そういえば、アスナの調子はどうだ?」
ポリゴン片となってこの世界から消えていくエギルを眺めていると、スリーピング・ナイツとともに狩りをしている、アスナのことがふと気になって。
「大活躍だよ! アスナのおかげで凄い楽になって、その、ボクの出番がないくらいに……」
最初は自分のことのように喜んでいたユウキだったが、徐々に言葉が小さくなって萎れていく。現リーダーとして譲れない何かはあるのだろうか、などと思いながらもアスナに比べれば相手が悪い。
「思う存分戦えるからいいんだけど……いいんだけどさ……」
「……まあ、ユウキに思う存分戦ってもらえば、アスナも指示出しやすいだろ」
リーダーとしてちょっとさ――とぐずりだすユウキを慰めていると、突如として『あ!』と彼女は声をあげる。何か気になったことでもあったのか、急に立ち上がった勢いで髪の毛が揺れる。
「どうした?」
「内装の設定、終わったんだよね? ちょっと見せてもらっていい?」
明るく表情がコロコロ変わって見ていて楽しいが、突如としてそう語り出すユウキに戸惑いつつ、とりあえず俺も机から立ち上がった。武器を眺めながら食べる甘いものもあるまいと、喫茶席からは武具店の方は見えないようになっているからだ。大分長い間座っていたため、身体を伸ばしながら歩いていく。
「……どうしたんだ、いきなり」
「ふふふ。リズからショウキがちゃんと内装出来てるか、っていうチェックを頼まれてたんだ」
甘いものが自慢のエギル出張場の喫茶席から、ブラリと歩いて徒歩五秒。出張・リズベット武具店の開店前の光景が、俺とユウキの目の前に広がってきた。……などと大げさに言うまでもないのだが、リズに頼まれたとかでユウキは胸当ての前に腕を組み、真剣そのものな表情で出張場を見つめていく。
正直イグドラシル・シティにある本店の内装を完全に模倣した作品のため、特に何があるわけではないのだが――
「……可愛くない」
「待て」
――ただし、審査員からは思いも寄らないコメントから寄せられた。内装はリズベット武具店の本店のコピーだとか、そのコメントに残る審査は何だとか、そもそも武具店に可愛さは必要なのかとか――様々なツッコミどころが駆け巡っていき、待て、と言われて本当に待つユウキが犬みたいだ、とか思いながら、ようやく口からコメントが出た。
「可愛いって……
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