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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十三話 イゼルローン
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ちを言うのだ。イゼルローン要塞が落ちればヴァレンシュタインは明確にヤン・ウェンリーを敵と認識するだろう」

ルビンスキーは顔をほころばせつつある。この男がこんな表情をするのか?
「ボルテック、英雄たちの戦いが見られるかもしれん」
「英雄たちの戦いですか……」

「激しい戦いになるぞ。同盟、帝国、そしてフェザーンも巻き込む大きな戦いになるかもしれん。己の足で立つ事が出来るものだけが生き残ることが出来るだろう」
己の足で立つ事が出来るものだけが生き残る……。

「立てなければどうなります?」
答えはわかっていた。それでも問わずにはいられなかった。
「踏み潰されるだけだ」

ルビンスキーは楽しそうに話している。この男に敵わないと思うのはこんな時だ。フェザーンは、俺は生き残れるのだろうか? ルビンスキー、お前は生き残れるのか? 一度でいい、お前の蒼白な顔を見てみたい……。


■ 宇宙暦796年2月25日   自由惑星同盟統合作戦本部 ワルター・フォン・シェーンコップ


「これはこれは、ティアマトの英雄が小官に会いたいとは光栄ですな」
俺は目の前の男を見た。ごく温和そうな何処と言って特徴の無い青年だ。この男がティアマトの英雄? とてもそうは見えない。

「貴官に相談があってね」
「小官でよろしいのですかな」
「貴官でなければ駄目なんだ」

妙な事を言う男だ。俺でなければ出来ない? 冗談ではないようだが……。
「まだ正式発表はされていないが、今度イゼルローン要塞攻略作戦が発動される」
「ほう、上層部も懲りませんな」

「兵力は半個艦隊、司令官は私なんだ」
「!」
この男が半個艦隊でイゼルローンを攻める? 何かの冗談かと思ったが本人はいたって真面目な表情だ。

「貴官の協力が必要なんだ」
「それは一体どういう……」
ヤン・ウェンリーは俺に協力して欲しい内容を説明した。はっきり言ってペテンだろう。しかし、上手くいくかもしれない。後は俺の決断しだいか……。

「閣下、ひとつ伺ってよろしいですか?」
「ああ」
「何故イゼルローンを落とすのです?」
「?」

「実行の技術面ではこの作戦があったからでしょう。ですがその底には何があったか知りたいものです。名誉欲ですか、出世欲ですか」
「出世欲じゃないと思うな」
まるで他人事のようだな。

「三十歳前で閣下呼ばわりされれば充分だ。第一この戦いが終われば退役するつもりだ」
「!」
退役? この情勢下に退役するだと?

「理由は二つある。一つは平和が実現するかもしれない」
「平和ですか」
今度は平和? この男は一体何を考えている?

「イゼルローン要塞が落ちれば帝国は同盟への侵攻ルートを失う。それに帝国では内乱の危険がある。一
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