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満願成呪の奇夜
第5夜 邂逅
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て軽いために本人のスタイルに合わせて副装備を持つことで幾らでもカバーが可能だ。

 シリンダーの回転を確認し、八発の弾丸を装填したことを確認し、ジャキリ、と小気味のいい音をたてて弾倉を収めたトレックは腰のホルスターにそれを差し込んだ。撃鉄は流石に引いていないが、銃が手元にあるだけでも丸腰とは随分違う。

 腰の近くに置いておいた鍵束を拾い上げたトレックは、ごくり、と生唾を呑み込んで馬車の奥の扉を見る。この奥に自分のパートナーになる女が待っているのだろう。話によるとこの先にいるのは死人の肝を喰らった女で、しかも現在拘束されているらしい。教導師は「余程の事がない限り命令には従う」と言ったが、トレックの言う事を聞いてくれる保証はどこにもない。

(話の分かるだけの理性的な女性ならいいなぁ……)

 叶わぬ願いとは思いつつも、儚い願いだと自覚するトレックは扉の鍵穴に鍵を差し込み、回した。
 内部でガチャリ、ガチャリと数度金具の音が鳴った後、扉はゆっくりと奥に開かれていく。

 とても、人がいるとは思えないほどに暗い空間だった。

 罪人を輸送するための牢であるが故、この中は扉が開かれない限り一切の光が入らない。すなわち、一切の加護を約束されない根源的な恐怖の空間。呪獣が入る隙間はないが、この空間には大陸の民にとっての『救い』が完全に排除されている。

「人間のいていい空間じゃない」

 自然と、そんな声が漏れた。彼女は道徳的には大きな罪を負っているかもしれないが、こんな空間に閉じ込められるほどの罪を果たして犯したのだろうか。光のない空間に短期間いるだけでも、大陸の民は途方もない不安に駆られる。それを、ギルティーネという女は護送中ずっと味わっていたのだろう。

 牢の中を良く見渡すと、陰に隠れたままの最も奥の部分に人影を見つけた。


 それが本当に女性なのか、一瞬トレックは確信が持てなかった。

 鉄の床に膝をついて座り続けるその人間は、拘束衣によって両手を胸の前で交差するようにベルトで固定され、両足は床から伸びる枷によって縛られ、その顔は鉄仮面のような拘束具を被せられている。これでは光どころかこちらの声が届いているかも曖昧で、扉が開いた今でも微動だにせずそこに鎮座している。
 
 痛々しい姿だが、同時に拘束された獣のようで不気味だ。
 近づいた瞬間に襲われるのではないか――そんなありもしない想像を掻きたてられるが、もう試験まで時間に余裕がない。トレックは彼女の拘束具に近づき、慣れない手つきで錠前に一つずつ鍵を通して解除していく。

 最後に残された鉄仮面に後ろから手をかけたとき、彼女の首が微かに上へ動いた。

「ッ!!!」

 突然の動きに驚いたが、しばらくして頭が拘束具を外しやすい角度になっている
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