第4夜 罪人
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在するが、あくまで教区機関の体制を取っているサンテリア機関以外――つまり教会の内部機関は全てが動物のエムブレムを掲げている。そして、禿鷹のエムブレムは罪人の護送、裁判、及び有罪判決者の管理を担当する『断罪の鷹』の掲げるそれだ。
「――レトリック準法師、来い」
「……分かりました」
馬車の後方から掛かった声に、トレックは拳を握りしめながら答えた。
トレックが来たことを確認した教導師は、鉄枠でがっちりと固められた馬車の扉をゆっくりと開ける。ギギギギ、と鉄の擦れる音をたてて開かれた馬車内には、更にもう一つ固く閉ざされた牢のような扉が設けられている。
「『断罪の鷹』の所有する馬車とは皆こんな物なのですか?………まるで罪人を運ぶ護送車のようですね。いや……あるいは俺のパートナーは本物の罪人ってことですか」
「………何の事かな?」
「ギルティーネ・ドーラット………なんでも『鉄の都』では『人喰いドーラット』と呼ばれているとか?」
「……………まぁ、一先ずは中に入りたまえ」
教導師の男は一瞬だけ目を細め、馬車の中へとトレックを誘った。
内部にある腰掛けにトレックを座らせた教導師は反対側の腰掛に背中を任せ、改めてこちらを見た。
「まずは少々驚いた、と言っておこう。こちらからは一切情報を明かさなかったにも関わらずそこまで知っているとはね。案外、独自の情報網でも持っているのかな?」
つまり、こちらが何も知らなければ完全に騙して丸め込む気だったのか――そう内心で毒づきながら、トレックは敢えて感情を殺し、素っ気ない返事を返す。今度は適当に誤魔化されるわけにはいかない。
「………しがない学生の噂話も馬鹿には出来ない、それだけです」
「『鉄の都』と『朱月の都』は余りにも距離が離れている。こちらとしたことが、現実の距離は情報の距離とタカを括りすぎたようだ」
どこか感心したような声をあげる教導師に、トレックは内心で歯噛みした。
これ以上下手な嘘を突かれるのは我慢ならないために、トレックは敢えて知った風な口をきいた。実際にはまだ断片的な情報と推測を組み合わせただけの情報だが、向こうは一応こちらが多くを知っているのだと騙されてくれたらしい。今度は相手一人、会話のペースを握って上手く言葉を選べば、今度こそ情報を得られる筈だ。
「しかし機関も思い切ったことをする。呪法師の『取引』に関する話は制度として勉強しましたが、まさか学生の内にこんなにも直接的に関わるとは思いませんでしたよ」
「特例なのだよ。この奥にいる彼女はな……我々としても判断に困ったが、一応は害なしと判断せざるを得なかった」
カマかけで情報を引きずり出す。トレックは『断罪の鷹』のエムブレムを掲げた馬車の中に相手がいる事から、「相手は司法取
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