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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十三話 新王朝
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っては帝国よりも同盟市民の方が厄介な存在らしい。変なの。
宇宙暦 799年 12月 12日 ハイネセン ある少年の日記
昨日、TVで変な番組が有った。フェザーンで行われた討論会を放送した番組だった。討論会なんて詰まらないからチャンネルを変えようとしたら母さんから“変えちゃ駄目”って怒られた。なんでも凄く大事な番組らしい。大人達の間では大変な話題でこれを見ないと周りの話に付いていけないって鼻息を荒くしていた。
仕方なくて一緒に見たんだけど出ていたのは銀河帝国、フェザーンの政治学者、歴史学者だった。フェザーンにも政治学者とか歴史学者なんて居るんだ、ちょっと不思議な気分だったけど討論の内容は少し分かり辛かった。母さんが説明してくれたけど簡単に言うと今の銀河帝国はルドルフの創った銀河帝国とは全く別の物でゴールデンバウム王朝の名で呼ぶのは正しいと言えないのではないか、別な王朝、新王朝として扱うべきではないか、いやゴールデンバウム家が皇帝を輩出しているのだからゴールデンバウム王朝ではないか、そんな討論だった。
僕もゴールデンバウム王朝じゃないかって思ったけど新王朝として扱うべきだと言う人の主張って結構理屈が通っていて面白かった。元々ルドルフが創った王朝っていうのは長い年月の間に不都合な所が出て来てどうにもならなくなった。本当なら崩壊とか分裂してもおかしくなかった。それぐらい政治的には腐敗、混乱していた。本当に分裂していれば良かったのに。そうなれば同盟が帝国を支配して宇宙を統一出来た筈だ。
フリードリヒ四世は信頼出来る臣下達と共に帝国の再構築を行った。でもその時フリードリヒ四世が帝国再構築の理念としたのはルドルフが掲げた理念とは別の物でそれが三年前の五箇条の御誓文だった。理念が違う以上同じ銀河帝国とは言えない。
革命が無く同じ一族が皇帝として君臨するとはいえ同じ王朝とは言えないのではないか、新王朝として扱うべきだと。反対する人はゴールデンバウム王朝はゴールデンバウム王朝で新王朝論など所詮は過去の悪行から逃れようとする姑息な手段だって批判していた。
母さんは新王朝論に頻りに“そうねえ”って頷いていた。新王朝論に賛成なのって聞いたら“実際に酷い扱いを受けていないでしょ”って言われた。ルドルフの帝国だったら僕達は皆反逆者の末裔で酷い目に遭っていたって。三十年かけての併合だって同盟市民の事を考えていてくれるからだって。母さんは親帝国派だからな。
今日、学校に行ったら討論会を見ている人が多いのに驚いた。僕と同じで家族が見ているから仕方なしに見たらしい。でも見て良かったって人が多かった。新王朝論って結構皆に受け入れられているみたいだ。誰かが言っていたけど新王朝論を唱えた帝国の学者は帝国政府のために働いている学者らし
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