95話 誓
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解けないというものなら……どれくらい?陛下と姫は、エルトと私は、どれだけ待てば、元の平穏な生活に戻れるんだろう。
感情が、感情が、勝手に溢れて、悲しくて、苦しくて、でも、涙なんて……私には……私を殺したわたしにはないのだから……流れない。
近寄ってきた魔物を蹴り飛ばせば、どこかに叩きつけられるまでもなく粉砕し、消滅する。茨のドラゴンをひとにらみすればもんどりうって逃げていく。そんなこと、どうでもいい。
「……ははうえ」
ふらふらと、魔物のひしめく城へ入っていく。魔物は私を恐れたのか、襲ってこなかった。ククールは何も言わずに付いてきてくれる。だから、私は泣かないし、だから、きっと絶望なんて、してない。
城の中で茨となった母上。血が繋がっていないから当然だけど、似ていない。呪われてもなお美しい姿は、暗い中でも変わらない。若々しい姿は、時を止められて。
「ちちうえ……」
今度は屋敷へ向かった。
髪の長い壮年の男性。勇ましい父上はいつだって私と一緒に戦ってくれた。母上とは年齢が離れすぎているようだけど、そんなことはないんだ。母上が体が弱いように、兄上が耐えきれなかったように、叔母上の目が悪いように、ライティアが狂った世界を見るように。父上は、早く年をとる。
剣も魔法も強い尊敬すべき父上は、執務室でなにかに気づいたように顔を上げて茨と化す。
「バートランドさ、ん……」
エルト以外の、唯一私をただの近衛兵扱いしてくれた人。城の門番。彼とエルト以外の兵士は名前を知っていても親しくなんてしてくれなかった。厳しく、優しく、叱ってくれた人。その人も、嗚呼、茨だ。
触れれば皆温かいのに。生きているのに。動けないんだ。のろいが、のろいが、のろいが。
私には効かない呪い。エルトにも効かない呪い。原因は、分からないけれど。でも、「そんなもの」のせいでみんなは、辱められて。
「ククール……ありがとう、ここに付き合ってくれて……」
「……その程度気にするなよ」
「優しいね。ついでに私の覚悟を聞いてくれるかい?」
「……あぁ」
「私は、呪いを解くため……まだ旅を続けるよ。必要だったら、ドルマゲスみたいに人ならざる者にだって、なってやる。そして、平和にするって、誓う」
ククール、ありがとう。今まで。君がいなかったら絶対ドルマゲスみたいな強敵、倒せなかった。オディロ院長の敵、討てた君にはもうこの旅は関係な……。
「おいおいトウカ。俺が明日にでもどっかに行っちまうみたいな言い草じゃねぇか?」
「……?流石に明日どっかに行くとは思ってないけど。ゼシカをリーザスに送るぐらいは着いてくるでしょ?」
「……ゼシカも今抜けるとは思わないけどな。なぁトウカ。この城が、この場所が大切
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