Side Story
少女怪盗と仮面の神父 15
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だった場合は、そりゃあもう贅沢ですよ。絶景を堂々と独り占めですからね。教会の敷地から眺める海には劣りますけど」
「ふふ。教会の外門から見下ろす村の景観も圧巻ですよ。住み慣れるには、少々時間を要しますが」
海へと向かうなだらかな傾斜地で、チェッカー柄のように配置されている木造二階建て庭付き家屋の群れ。
その隙間を縫って中央広場まで出ると、砂浜へ続く階段の両脇に武装した自警団員が二人、間隔を空けて立っていた。
そこから西側の少し離れた所にある、開店したばかりの酒場前にも一人。
同じく東側にある村長の家の前には、誰も居ない。
灯りが漏れていることから察するに村長の警備を兼ねて屋内で待機中か。
「砂浜と通じているのは、この階段だけですか?」
「いえ。船着き場の近くに、水揚げされた魚を一時保管する施設があって、その手前に搬入用の小道が作られてます。舗装はされてませんが」
「ああ、あの大きな倉庫ですね」
夜目が利くのだろうか?
ついさっきまで地上を真っ赤に染めていた陽光はあっという間に海没し、遠く離れた船着き場の辺りはもう、暗くてはっきりとは見えていない。
それでも、アーレストが見つめる先には確かに保管施設がある。
「住宅区の東側には漁業関係の建物しかありませんが、行ってみますか?」
国のど真ん中、内陸部に位置する王都には当然『漁業』なんかない。
興味があるならと尋いてみたが、彼は首を横に振った。
「ここまでで十分です。ありがとうございま」
「アーレストさまーっ!」
ドカーン! と、派手な衝突音を響かせて。
何かが突然、アーレストの体に激突した。
彼が勢いで吹っ飛ばされなかったのは、激突してきた何かが妙に細っこい女性だったからだ。
(って、ちょっと。この人今、砂浜から走ってきたわよ? 驚いてないで、仕事しなさいよ自警団員! もしこれが怪しい奴だったらどうすんの!?)
慌てふためく自警団員二人を睨むミートリッテの斜め前で、アーレストにべったり貼り付く謎の女性。
背格好だけで判断するなら、ハウィスよりやや年下? くらいか。
「マーシャルさん!? 何故、貴女がここに!?」
アーレストも酷く慌てている。
「退屈だったから、来ちゃった」
驚いて固まる一同を気にもせず。
マーシャルと呼ばれた女性は、舌先をペロッと出して無邪気に笑った。
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