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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 15
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陽当たりと風通し、水と土の関係を重視する設計でしょうか」
「みたいですよ。なんて、私はオレンジの農園で働かせてもらってますが、実のところ、野菜についてはよく解ってないんです。村のおばあちゃん達が頑張って育ててるなーって、道すがら横目に眺めてる程度なので。神父様は栽培に詳しいんですか?」
「いえ。ただ、植物にも適度な光や水や風通しが必要でしょう? 見た目に全体を気遣っていると感じたので、多分そうではないかと思ったのです」
「へえ……」

(畑仕事とはあんまり縁が無さそうな王都から来た人間でも、植物に理解はあるんだ。意外ね。南方領の大きな街に住んでる人達だって、大半は買って済ますか、小鉢で生けてる程度なのに)

「それに、ネアウィック村が奏でる音色は総じて心地好い。必要以上に理を捻じ曲げずにいることで良い循環が保たれ、ここに住まう生命に活力が満ち溢れている証拠です。こちらに来るまでの街などでは胸を引き裂かれる思いでしたが、こうした場所が残されていると知り、わずかに救われました」
「音色、ですか?」
「ええ」

 ちょっと前にも、似たような言葉を聞いた気がする。
 あれは、確か……
 そうだ。
 教会のアプローチで鍵を預かって、礼拝堂に入る少し前。
 ミートリッテの音が綺麗とかなんとか言っていた。

「貴女にも、聴こえるでしょう? さざ波の声、鳥や虫達の歌、風の囁き、木や草花の語らいが。ここには無駄な物など一切なく、すべてが輪を描いて繋がっている。あらゆるものが産まれ生きて、死を迎えても地へ水へ還り、新たな命を育む糧となる。途切れることなく続き、されど二度と同じ旋律は辿らない、限られた刻の多重奏。これ以上に美しい音楽を私は知りません」
「…………」

 舗装(ほそう)されてない道を、住宅区へ向かって歩きながら。
 アーレストは本当に嬉しそうに笑っている。

 なんとなくだが……
 この人物を放っておいたら、カエルや羽虫などを追いかけて一日中場所を選ばず走り回ってるんじゃないか? と思ってしまった。
 そんな子供っぽい真似はしないだろうけど。
 あくまで、なんとなく。

「……私も、波の音は好きですよ」

 アーレストの言葉は、詩的すぎて所々意味が解らないが。
 自分を拾ってくれた村が好意的に見られているのは、純粋に嬉しい。
 こそばゆい気持ちで微笑むと、アーレストの顔が急に強ばった。

 なに? と思うより先にサッと顔を逸らした彼が、一歩先を進み出す。
 その背中を目で追い

「あ。」
「どうされました?」

 なんでもない顔で振り返る神父越しに、昨夕視線を感じた場所が見えた。

(……私、バカだ。どうしてすぐに思い出さなかったんだろう)

 船で会った腐れ男共とは違い、恐ろ
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