第三部
名誉と誇り
にじゅうさん
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に!
―
森の浅い場所。
数メートル戻れば、そこはすぐに森と平野との境界である。
そこまで連れてきた騎士の遺体と、いまだ気を失っている騎士。
私は適当なところに遺体を置き、プラズマキャスターの照準を合わせると、トリガーを押して頭を吹き飛ばす。
頭蓋骨が弾ける音と、内容物が飛び散る音。そして、既に物言わぬ遺体に更に鞭を打つ光景に、エリステインも目を背ける。
「……起こすか」
時おり小さな呻き声を上げる騎士を持ち上げて言う私に、エリステインは眉を寄せて見上げてくる。
「なんだ?」
責めているつもりは無いが、私の声色は決して機嫌の良いものではない。
必要なことであると、自分自身納得して行っている行為ではあるが、好き好んでこんな外道な行いをするほど落ちぶれてなどいない。いくら狩猟大好き、戦うの大好きな我々種族であっても、こんな行為は掟や名誉に反する行為であると言ってもいい。
狩りと戦闘、掟や名誉そのどちらも重きを置いていない私からしてみれば、その想いはひとしおだ。
「……これは本当に必要なことなんですか?」
そんな私の感情の全ては分からずとも、その声からある程度は読み取ったのだろう。
彼女は目を伏せ、おずおずと私に問いかけてくる。
「時間稼ぎにもなるか分からんが、念のためだ」
そう言って、私は持ち上げていた騎士を一度地面へ下ろす。
「大きな小鬼だったか。あの洞窟内で起こっていたことは、全て報告しているのだろ?」
「……はい」
「であれば、同じような死体が転がっていれば、向こうが勝手に色々と推理してくれるだろうよ」
恐らく、生き残って村へと戻っていたスタインは、面白生物のことも上に報告をしている筈である。
多少死因は異なるが、頭部がないのは同じだ。あとは報告を受けたものが洞窟内、面白生物、今回の犯人を勝手に紐付けてくれるだろう。
スタインに関しては、これは遺体すら存在しないのだからどうしようもない。向こうが邪推してくれれば儲けものといったところか。
あとは、私の船とは反対方向へと自然に誘導するように、この森の生物の死体で道しるべを作ってやればいい。
かなり単純な工作ではあるが、多少の時間は稼げる。何故ならば、騎士団の総隊長と呼ばれたスタインを含め、混沌獣すら殺した生物がこの広い森林内を闊歩している可能性があるのだから。
私はそのように彼女に告げて、再度男を持ち上げる。
「でも、うまくいくのでしょうか……」
「うまくいかなくても、それはそれで構わない。それ自体が目的ではないからな」
そう、誘導することが目的ではないのだ。
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