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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十話 決断
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た。
この情報をもっと前に得ていれば、司令部ももっと慎重になったかもしれない。そうすれば犠牲も減らせただろう。ヴァレンシュタイン少将、なんとも厄介な男だ。今回何らかの事情で降格したらしいがこのままで終わる男ではないだろう。
「各艦隊司令官を見たか」
「ええ見ました」
キャゼルヌ先輩が問いかけてくる。そう、私も気になった所だ。
「いずれも若く、そして平民か、下級貴族のようです。門閥貴族のひも付きではないにも関わらず少将にまで昇進している。軍主流派からは外れたが実力は有る男たちでしょう。実際前回の戦いでは彼らが同盟の両翼に大きな打撃を与えました」
私の答えに、シトレ本部長とキャゼルヌ先輩は顔を見合わせた。表情が暗い、どうかしたのか?
「その男たちだが、おそらく今後は宇宙艦隊の中核になるはずだ」
「どういうことです。シトレ本部長」
困惑する私にキャゼルヌ先輩が応じる。
「ヤン、帝国で新しい動きがあった」
「?」
「ミュッケンベルガー元帥が退役した」
「!」
ミュッケンベルガー元帥が退役、後任はだれだ?
「ミュッケンベルガー元帥の後任は、上級大将ラインハルト・フォン・ローエングラム伯爵だ。旧姓はミューゼル、そう言えば判るだろう」
「本当ですか、キャゼルヌ先輩。彼はまだ二十歳にもならないでしょう」
「驚くのは未だ早い」
「?」
キャゼルヌ先輩の口調は苦い。一体何が有った。
「宇宙艦隊副司令長官にヴァレンシュタイン大将が任じられた」
「大将?」
「二階級昇進したらしい」
一層苦い口調でキャゼルヌ先輩が言葉を吐き出す。そうか、副司令長官か、確かにあの艦隊司令官達は宇宙艦隊の中核になるだろう。
シトレ本部長が口を開いた。
「ヤン少将、君は帝国がこれからどう出ると考える」
「そうですね、……ローエングラム伯は自ら攻めてくるでしょう」
「その根拠は」
「ローエングラム伯には実績が少ない。実績をつけ元帥に昇進し自らの地位を磐石にしたいと思うはずです。それに帝国は内乱が起きる前に同盟を叩いておきたいと考えている。」
「私もキャゼルヌも同感だ。で、勝てるか」
本部長は強い眼で私を見てくる。少しの躊躇いも見逃さないつもりだ。
「……難しいですね。彼は間違いなく有能です。前回の戦いでも彼の率いる軍に中央は押されまくりました。あれで両翼との連携が取れなくなったんです。それに副司令長官にはヴァレンシュタイン大将が居ます。負ける戦をさせるとも思えません」
本部長は目を閉じた。表情には迷いが有る、そう思ったのは錯覚だろうか。次の瞬間、眼を開けた本部長には間違いなく迷いは無かった。
「ヤン少将」
「はい」
「先日君から聞いたイゼルローン要塞攻略作戦だが、準備にかかってくれ。艦隊
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