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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十九話 信賞必罰(その2)
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のは止せ。

「それと、卿が指揮権継承で取った手段は非合法ではあるが、それによって勝利を得たのも事実だ。違うか」
「しかし、それは」
違わない。けど気にしなくて良い、ほっといてくれ。

「今回の戦いで出征した六百万の兵、そしてその家族から、卿への処分について不当だと抗議が届いておる。軍務省、統帥本部、宇宙艦隊司令部へメールやら手紙やらだ。」
「……」
そんなもん出すな! どいつもこいつも碌な事しない。

「今回の論功行賞で遠征に出たものが昇進し、卿が処罰を受けたままで納得すると思うか? 元の階級に戻ったくらいで納得すると思うか? 皆が納得せぬ人事に何の意味がある。形式ではない、信賞必罰の実が問われよう」
「……」

「卿を二階級昇進させ大将にする。異存ないな」
「……はい」
エーレンベルクにトドメを刺された。ヴァレンシュタインは死んだ……。
負けた、爺連合に負けた……。いつもこれだ。俺ってやられキャラだったのか。

「それでだ、副司令長官も頼む」
ちょっと待て、ミュッケンベルガー。
「しかし」
「まだわからんか、今の帝国軍に卿以上に将兵の信望を集めるものはおらん」
「……」

「ローエングラム伯は宇宙艦隊司令長官に相応しい“威”がある。しかし、未だ若く欠点が多かろう。特に将兵の信望において卿には及ばん。卿が副司令長官として補佐してくれれば将兵も安心して付いて行くであろう」
「……」

「卿以外には頼めんのだ。卿が副司令長官ならローエングラム伯が出征中でも残存艦隊を指揮し内乱を抑えられる。既にリヒテンラーデ侯にも相談済みだ。侯も賛成してくれた」
そういうとミュッケンベルガー元帥は俺の顔をじっと見た。先程までの悪人顔じゃない。誠実な漢の顔だ。

「エーレンベルク元帥もミュッケンベルガー元帥も何時も難しいことばかり仰います」
「判っている。ローエングラム伯は卿に対し素直になれぬ部分が有るようだ。卿を副司令長官にすると言った時、面白くなさそうであったからな。卿にとっても不本意な仕事かもしれん。しかし、卿はいつも期待に応えてくれた。頼む、ミュッケンベルガーを楽にしてやってくれ」

そう言うとエーレンベルク元帥は俺に頭を下げた。ミュッケンベルガーもだ。
「お止めください、頭を上げてください。判りました、何処までご希望に添えるかは判りませんが、微力を尽くします」

負けた、負けたよ。仕様が無い、副司令長官をやるよ。嬉しそうな爺様連中を前に今後の事を思うと溜息しか出ない俺だった。



■ 宇宙暦796年1月30日   自由惑星同盟統合作戦本部 ヤン・ウェンリー


「今回の戦いよくやってくれた」
「損害は多かったと思います。ねぎらわれる事ではありません」
私は本部長室のソファーに座り
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