第十六話 幼児期O
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
確かに彼の望みは出来る限り叶うようにはした。能力は破格のものだったかもしれないが、正直あげた人間があれである。真剣に放浪やら逃走目的などの、便利思考優先な人物なのだ。戦闘や危ないことするぐらいなら逃げると、堂々と豪語した姿は今でも彼は思い出せる。今でも時々呆れている。野宿ぐらい頑張れ、自称冒険家。
あとの望みは魔法の素質や、優しい親、兄弟云々あったが、そこは特に問題はなかった。そんな条件に合いそうなところ等、世界的に探せばいくらでもあるはずだ。多少は考慮して生まれはミッドチルダにしたが、あとは特に手は加えなかったのだ。
それは、まったく自身の記憶にない世界より、地球とも多少は関わりがあるミッドチルダの方が良いと判断した彼なりの配慮。魂を世界に合わせ調整したことだし、後は彼を条件に合う場所に転生させてくれるだろうと、その時は胸を撫で下ろした。
彼がテスタロッサ家の長男として、生を受けたと気付くその時までは。
確かに彼の提示した条件には合うが、それにしてもこれはまずいと、さすがに彼も頬が引き攣った。思わず「あ、やっべ」と呟いてしまったぐらいに。
これが偶然の結果だったのなら、彼としても手を加えてやればよかったと後悔はしただろう。だが調べてわかったことだが、これが偶然ではなく、必然であったと理解した時、彼は本気で頭を抱えたくなった。少なくとも、ため息ぐらいは何度も出た。
なんで、こんなややこしいことになる。これが、彼の本心からの思いだった。
原因は彼の魂の歪み。そして、その歪みをつくってしまったのは間違いなく己の責任。影響はでるかもしれないと言ったが、まさかこんな形で現れるなど思ってもいなかったのだ。彼としても、まさかの可能性での言葉だったのだから。
彼の精神と魂のずれ。たった1つの些細な違いが、生みだした歪み。おそらくそのずれに、転生した彼は気づいていない。わからないから、魂のそれこそ奥底に眠るものの正体を知ることができなかったのだ。
「死」という現象に対する、重度のトラウマに。「生」という現象に対する、重度の執着に。
「あいつの精神も魂も、死に対する恐怖はある。だが、生に対する方向性がかなり違う」
彼は――死神は考える。この歪みは、メリットにもなれば、デメリットにもなる。全体的にみるとデメリットが目立つが、それでもある一点だけでいえば、とんでもないメリットとなる。
死にたくないから生き残る。そのためだけに生まれた歪みは、ただ己のみだけ生き残るのならば、これ以上ないほどの代物なのだ。
『え、能力に「転移」を選んだ理由? だっていろんなところに放浪出来るじゃん。楽できるし。それに、危ないことがあってもすぐに逃げられるだろ。俺、死にたく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ