第十六話 幼児期O
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げる方が生き残る確率は高いはずだ。アリシアの遺体が綺麗なままだったことから、おそらく爆発といった物理的な死因ではないと思う。少なくとも、駆動炉に異変を感じてすぐに行動すれば、転移で逃げるだけの時間は稼げるはずだと思うんだけど…。
「なんか考えすぎて、余計に頭がこんがらがってきた気がする」
なんか、難しいのはもういいか。俺のうろ覚え知識じゃ、これ以上わからないだろうし。とりあえず、6歳になるまではもう少し様子を見よう。それでいいだろう。
あ、そうだ。こういうときこそ、「勘」にきいてみたらいいんじゃね。前みたいにまだ大丈夫そうかだけでも、わかるかもしれないし。
あの違和感に気付いてから、俺は自分なりに暇な時間に調べてはいたんだ。そしたら、頭の中をからっぽにして、身体の力を抜くような感じにすると、なんとなくだけど思い浮かぶことがわかったのだ。ぼやっとだけどねー。未だによく原理はわからないんだけどさ、ははは。
俺としては、軽い気持ちだった。いつもみたいに曖昧な感じか、特になにもわからないかのどっちかだろうと考えていたからだ。でも、違った。
ちょっと便利なものとしか、思っていなかった違和感は―――
『来る』
「……え」
この瞬間、俺自身を飲み込むほどの強い激情をもって、俺の意識を塗りつぶした。
******
「……こりゃ、あいつにぶん殴られても文句が言えないかもしれない」
1人の男性がポツリと言葉をこぼす。彼の目の前には鏡台が置いてあり、それを難しい顔で眺めていた。本来鏡とは己の姿を移す役割の物だが、この鏡には目の前にいるはずの男性の姿すら一斉映っていなかった。
だが、この鏡にはこことは別の光景が映し出されていた。映っているのは、自然豊かな場所と、そこに建つ巨大な塔のような建物。そして、地響きが鳴り響き、塔からまるで金色の光のようなものが逆巻くように生みだされる光景が広がっていた。彼はある出来事以来、世界の様子を見ることができるこの鏡をよく覗きこむようになっていた。
彼の心情としては、またしても失敗してしまったかもしれない、という自責の念が渦巻いていた。最初の失敗は、間違いなく自身の責任だった。だから、彼には出来る限り生きて欲しいと願い、それを見送ったのだ。そのために新たな世界と彼の魂を繋ぎ合わせ、新たな存在の枠をつくり、縁も組み直した。
「影響がでるかもしれないとはいったが、こんな歪みを持たせて、転生させてしまうなんて」
彼にとってもこれはイレギュラーな事態だった。この歪みに気付いたのは、彼が新たな世界で命を得た後。男性が干渉できるのは、死という瞬間のみ。そのため、自身がいくらなんとかしたいと思っても、もはや手遅れだった。
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