第十六話 幼児期O
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する。胸が張り裂けそうなくらい痛い。身体が鉛みたいに重い。吐き気も襲ってくる。認めたくなかったけれど、間違いない。自分のことだからわかる。この声は、俺の声だ。
一番の敵は、俺自身だったんだ。
******
――数刻前――
俺はベランダの手すりを手でつかみながら、そこから見える景色を眺めていた。5歳児の身長だと、まだまだ手すりの上の方には届かない。やっぱり背が小さいなー、ともう見慣れた高さとはいえ、今の身長は少しばかり不満に思う。
ここでは、俺と妹以外に子どもの姿はない。最低でも20代の大人が駆動炉で働いている。妹以外に身長を比べる相手がいないから、俺の年齢での平均がよくわからない。たぶん低過ぎてはいないはずだけど。今度クラナガンで放浪する時は、しっかり見ておこう。
「良い風だなー」
『そうですねー』
コーラルと黄昏ながら、なんとなく会話をする。それにしても、本当に風が気持ちいい。太陽の照りが強くなってきたけど、丁度いいぐらいだ。ところどころでまた蝉が鳴き始めたのもあって、余計にそう思うなー。
「……そういえば、なぜアブラゼミは『アブラッ!』と鳴かないのだろう」
『黄昏ながらどうでもいいこと考えてますねー』
「だって、次元世界だぜ」
『ますたーって、次元世界にかなり夢を持っていますよね』
夢を持つことはいいことだって、誰かが言っていた気がする。俺としては、探せばト○ロやネ○バスぐらいはいそうな気がする。ラピ○タのパンはぜひ食べてみたい。
「ツクツクやミンミンはいるんだし、アブラもあっていいじゃん。こういう小さな疑問から、将来のエジ○ンさんが生まれるかもしれないんだぜ」
『まぁ確かに、当たり前を切り捨ててはいけないのかもしれませんが』
「実際は、俺もどうでもいいんだけど」
『…………』
いや、聞きたくはあるんだよ。聞きたくは。だから、無言で圧力かけてこないでよ。
それにしても、今日はなんかあんまりテンションがあがらないな。身体もなんか重たい気がするし。季節の変わり目で、体調崩したかな? コーラルに朝見てもらったから、熱はなかったはずだけど。
「じゃーん! これリニスだよ。上手に描けたでしょ」
「にゃ…う」
声のする方へ振り向くと、リビングのソファに座っているアリシアとリニスが目に入った。どうやらアリシアが、色鉛筆で画用紙にリニスの絵を描いていたらしい。
……たぶんだけど。いや、うん。あれだ、子どもはピカソと言うし。なぜ紫色やら緑色が見えるのかは、気にしないでおこう。あとリニスが困ったような顔で、こちらに助けを求めている気がする。なので、俺はこの家の長男として、アドバイスをしてあげることにした。
―――リ
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