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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十八話 信賞必罰(その1)
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から帝国を守ってきた。その男が居なくなる……。思わず哀しみが心を覆う。
馬鹿な、何を考えている、感傷など切り捨てろ! 目の前の危機をどうするか、それを考えるのだ。泣くのはその後で良い……。
「しかし、卿の後のことはどうする?」
「そのことで困っている。それにヴァレンシュタインの処分をどうするか」
「……」
切り捨てることは出来まい。帝国にはあの男が必要だ。しかし、何の処分も無しには出来ぬ……。
「信賞必罰は軍のよって立つところだ。罰せねばなるまい」
「やはりそうせねばならぬか、軍務尚書」
「うむ」
罰は与えねばなるまい。しかし小僧、楽はさせんぞ。責任はきっちり取ってもらう。
■ 帝国暦486年12月30日 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン邸 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
遠征軍が28日に帰ってきた。やはり元帥は発作を起していたらしい。幸いメックリンガー少将がうまくやってくれた。第三次ティアマト会戦は帝国軍の勝利で終わった。完勝は出来なかったようだが十分な勝利だろう。
元帥は今回の発作から指揮権強奪の件まで全て話したらしい。俺の書簡も話したようだ。元帥は退役するようだが、出来るのか? 現状を見ればちょっと難しいだろう。辞意を表明して皇帝に慰撫してもらう、そんなところかな。
懲戒処分を受けた。少将に一階級降格、一年間俸給の減給、一ヶ月の停職。やめられるかと思ったんだが駄目だった。処分としては結構きつい。懲戒処分だから人事記録にもこの先一生残る。いわば×が付いたのだ。ま、どうでも良い話だが。
まあ、今回の処分はあまり気にならない。これまでが順調すぎたのだし、減給も元々あまり金を使わないから痛くない。一ヶ月の停職も早い話が自宅謹慎させられているわけで、もちろん給与もなし。給与が無いのは良いんだが問題は……。
「閣下、この書類を見てください」
「……フィッツシモンズ少佐、私は停職中なんですが」
「それが終わったらこちらです」
どういうわけか、早朝からヴァレリーが来て俺に書類の確認をさせている。決裁印は要らないらしい。ま、停職中にサインしたらおかしいのは確かだが、だからと言って書類の内容チェックなら問題ないというのは拙くないか?
「少佐、私は停職中なんです。おまけに降格処分を受けて傷ついている。ゆっくり休んで心身を癒したいんです」
「ですから書類を持ってきました。閣下を慰めるにはこれが一番です」
ヴァレリーは酷く機嫌が悪い。俺のせいで何かとばっちりでも食ったんだろうか?
「少佐、怒っていますか? でもあれは仕方が無くて……」
「閣下、お辞めになった後、小官をどうするつもりでした?」
「もちろん、リューネブルク中将にお願いするつもりでしたよ。元々中将から預かったんです
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