93話 雷鳴
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ゲスに刺した剣を拾い、不要な槍を背負い、駆け出した。
槍の十八番である突きは使えない。ほぼ間違いなくトウカに刺さるから。そういえば剣は久しぶりだけど……問題ないね。そんなことより問題は、切れ味抜群とはいえ「トウカの得物」を装備したせいでマホトーンが発動してしまったこと。槍メインのせいで他に扱えるものも持ってないから仕方ない。
僕はこれで自力で回復出来なくなってしまった。
それに他のみんなが気づいてるかは分からないけど……信じよう、みんなを。
僕達はバラバラになって、攻撃を拡散しながら立ち回る。走って、跳んで、或いは受け止めて、切り裂いて、攻撃をなんとかいなす。理性の欠片もなさそうな外見同様、身体の負荷なんてお構い無しの「それ」は自分の体液を垂れ流しながら、肉片を撒き散らしながらさっきの翼の生えた姿とはケタ違いの攻撃を繰り出していた。
そうだな……さっきのはなんとか一撃なら耐えれたけど、今回はヤンガスや僕みたいな体力も防御力もある前中衛が、上手くいなして腕を持っていかれる、避けきれなかったゼシカが危うくミンチになりかけてザオリクを受ける……そんな戦局だ。
そんな時、くぐもっていたものの、トウカの声が聞こえた。
「……っ!……っ!……ゃらくさいッ!」
ざくりざくりと攻撃を避けつつ腹部を斬りつければ、トウカ側からも剣が、拳が飛び出す。今だと思ってその手を掴み、渾身の力で引きずり出そうと、する。一瞬トウカの顔が見えた。そこまでは、僕が引っ張り出せた。
銀の髪を血で赤く染めて、見開かれ、瞳孔まで開ききっている紫の瞳は充血したのか真っ赤で、全身どこもかしこもボロボロでも闘志を失わない覇気は僕をビリビリとさせて、十年間慣れ親しんだ親友は、溶かされたのか、噛みちぎられたのか、足が、足がなくって。
自分の血で真っ赤になりながら、取り込まれそうになりながら、僕の手をとったトウカを、引っ張りだそうとすると、そんな傷なのに悲鳴をあげなかった癖に……喉が詰まったように声のない悲鳴をあげる。
嗚呼。こいつが。こいつがッ!こいつが、僕の……唯一の友を、かけがえのない仲間を傷つけたって、訳だよね?許せるものか、許せるわけがない!城のみんなをあんな姿にして、陛下も姫も人間として生きられないのに、ゼシカのお兄さんを殺したのに、ククールの恩人を殺したのにッ!
こいつは、何も持ってなかった僕の、親友すら奪う気なのッ?!
再び飲み込まれたトウカ。でも手は離さなかった。僕の手まで引きずり込まれる。気付いたヤンガスが、橋から落ちたヤンガスを助けたトウカのように、僕の助太刀をする。
持てる力を全部使って、助ける!!
「おおおおおおおおオオオオオおおおおおおおッッ!!うバウ気かァああああアああ
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