第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
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白銀の流星が地を駆け抜け、再び森に破壊の軌跡を刻みこむ。
其所より離れた場所でも、その流星の暴威に負けぬ戦場の傷跡が増えていた。
一時的に雲が月を隠し闇が濃くなっていた戦場に、雲の切れ間から差し込んだ月光が破壊を行っているそれの姿を露わにする。
月明かりに照らし出されるその身は、まるで岩の様な質感を――――否、“様な”ではなく本当に石や岩で形作られている。
突筆すべきはその身の丈の大きさだ。
灰色や赤茶けた岩石で出来た人型に見えるその身は優に十mを超え、両腕は異常に太く十mの巨体にも関わらず地上にまで垂れ下がっていた。
そして、その見ただけでも相当な重量を感じさせる豪腕を、岩の巨人は虫でも払うかの様に鋭く振り抜く。
すると腕を形作っていた岩石が散弾の様に飛散し、只の飛石だと思えない破壊を縦横無尽に大地に刻み付ける。
まるで爆撃の跡と錯覚するほどの惨状となった森に巨人の声が轟いた。
『ちょこまか逃げんなッ!この野郎ッ!』
その声は紛れもなく勇儀の弟である王儀のものであった。
王儀は言葉をそう吐き捨てると同時に、先程とは真逆方向に腕を振り散?を放つ。
岩石が着弾し木々や大地を粉砕する中――――鋭い剣閃が王儀の背後から迫り、巨人の背に斬?が刻まれる。
だがその一撃は岩肌に傷跡を残しただけで、王儀本人には微塵も傷を負わせてはいなかった。
そして周囲に放った岩石達が吸い寄せられる様に集まり、再び巨人の腕を形作ると再度散?が巻き散らかされる。
何度目かも、もう分からないその応酬――――対峙者である犬走椛は『朧月』で身を隠しながら、静かに心の中で怒りの声を上げていた。
(あの鬼、さっきからッ!……野郎!野郎!って…………私は女ですよッ!!)
少々場違いな感じの激昂ではあるが椛も女性である、『野郎』等と連呼されれば憤って当たり前であろう。
その怒りを原動力にしている訳ではないだろうが、椛は滑る様に木々の間を駆け抜け巨人の背後を取ると、右手に持つ三日月の刀を袈裟に振るう。
だがどう見ても巨人との距離は十mはあり、刃が届くはずがない。
しかし椛が振るった刀の刃は、その剣?の勢いに合わせるかの様に――――撓り伸びた。
まるで護謨の様に伸び、迅く鋭いその斬?は風切り音すら立てず巨人の背を舐める様に剣閃を奔らせる。
妖怪や神の中には己の気を物質化出来る者がおり、その物質化した物は『妖鉄』『神鉄』と呼ばれる。
諏訪子の鉄輪や可奈子の御柱、ルーミアの大剣や幽香の日傘等がこれに当たる。
白狼天狗達の武具も妖鉄であり、破壊されてもまた造り出す事が出来る物だ。
だが椛は昔からその物質化が
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