暁 〜小説投稿サイト〜
東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
[10/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
量の出血を起こしている。
 しかし、それでも王儀は生を繋いでいるのだ。恐らく文が持ちうる最大火力の直撃を受けているというのに。

 生きていたのは驚嘆だが、今なら楽にとどめを刺せるだろう、と文と椛はそれぞれ最後の一撃を放つ構えに入る。
 そんな文の瞳に宿るのは憎悪の炎、王儀に対する恨みでは無い――――“鬼”という種族そのものに向けられた純然な殺意。
 文にとって大切な者を奪ったのは鬼だ、“誰”か等は意味は無い、“鬼”と種族全てが(かたき)なのだ。
 個人によって『憎悪』という色は昏いものと捉えるだろう――――だが、もしかするとその色は何よりも深く美しい色なのかもしれない。
 何故なら――――『憎悪』が強いと言う事は、逆を言えば『愛』が深いという意味なのだから。

 ふと……文に視線を向けた椛は違和感を感じた。
 手に風の螺旋を纏わせ、今まさに地上の王儀に断頭の刃を振り下ろそうとしている文の……足元の影に。
 違和感の正体に気付いた椛は咄嗟に文に向け警告を発する――――おかしい筈である、()()()()()()()()()()()()のだから。

「文ッ?そこから離れてッ!早くっ!」

 だが、椛の警告は僅かに遅かった。
 文の足元の影が、溢れだす水の様に吹き上がり彼女()に纏わり付いたのだ。

「ッ!くッ!このッ?」

 引き剥がそうとする文を嘲笑うかの様に影は彼女を絡め取り、その一部が人型へと変貌する。

「ケヒ!ケヒヒヒヒッ!オマエ、イイ(憎悪)シテルナ〜!ケヒヒ」

「…お前はッ!!」

 文は自身の目と鼻の先に現れた、黒く昏い色をした鬼の少女、無有(むあ)を見るなり目の色を変える。
 当然だろう、彼女(無有)こそ文の大切な者を奪った張本人なのだから。

「ケヒヒ!オマエミタイナ奴ハ壊シガイガアル!アァオマエガ壊レル時ハドンナ(絶望)二ナルンダロウ?ケヒ、ケヒヒヒヒッ!」

 無有はそんな言葉を吐くと同時に文と共に、時間を巻き戻すかの様に影へと消えていった。
 後に残ったのは何も無い空間と、

「文ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 夜空に吸い込まれる様に響き渡る、椛の絶叫だけだった。

 空中へと視線を向けていた椛に、突如何者かが襲い掛かるが、寸前で気付いた彼女は後方に大きく跳躍し襲撃者から距離を取る。
 そして、その襲撃者に視線を向けた椛は驚愕した。そこに居たのは全身血だらけの王儀だったのだから。

「……ゴホッ、……何処見てやがるこの野郎…まだ、終わってねぇぞ…」

 失われた右腕の傷を押さえ吐血した所を見ると、どうやら内臓にも相当な痛手を受けているのが分かる。
 そ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ