第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
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量の出血を起こしている。
しかし、それでも王儀は生を繋いでいるのだ。恐らく文が持ちうる最大火力の直撃を受けているというのに。
生きていたのは驚嘆だが、今なら楽にとどめを刺せるだろう、と文と椛はそれぞれ最後の一撃を放つ構えに入る。
そんな文の瞳に宿るのは憎悪の炎、王儀に対する恨みでは無い――――“鬼”という種族そのものに向けられた純然な殺意。
文にとって大切な者を奪ったのは鬼だ、“誰”か等は意味は無い、“鬼”と種族全てが敵なのだ。
個人によって『憎悪』という色は昏いものと捉えるだろう――――だが、もしかするとその色は何よりも深く美しい色なのかもしれない。
何故なら――――『憎悪』が強いと言う事は、逆を言えば『愛』が深いという意味なのだから。
ふと……文に視線を向けた椛は違和感を感じた。
手に風の螺旋を纏わせ、今まさに地上の王儀に断頭の刃を振り下ろそうとしている文の……足元の影に。
違和感の正体に気付いた椛は咄嗟に文に向け警告を発する――――おかしい筈である、空中に影が出来る訳が無いのだから。
「文ッ?そこから離れてッ!早くっ!」
だが、椛の警告は僅かに遅かった。
文の足元の影が、溢れだす水の様に吹き上がり彼女に纏わり付いたのだ。
「ッ!くッ!このッ?」
引き剥がそうとする文を嘲笑うかの様に影は彼女を絡め取り、その一部が人型へと変貌する。
「ケヒ!ケヒヒヒヒッ!オマエ、イイ色シテルナ〜!ケヒヒ」
「…お前はッ!!」
文は自身の目と鼻の先に現れた、黒く昏い色をした鬼の少女、無有を見るなり目の色を変える。
当然だろう、彼女こそ文の大切な者を奪った張本人なのだから。
「ケヒヒ!オマエミタイナ奴ハ壊シガイガアル!アァオマエガ壊レル時ハドンナ色二ナルンダロウ?ケヒ、ケヒヒヒヒッ!」
無有はそんな言葉を吐くと同時に文と共に、時間を巻き戻すかの様に影へと消えていった。
後に残ったのは何も無い空間と、
「文ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
夜空に吸い込まれる様に響き渡る、椛の絶叫だけだった。
空中へと視線を向けていた椛に、突如何者かが襲い掛かるが、寸前で気付いた彼女は後方に大きく跳躍し襲撃者から距離を取る。
そして、その襲撃者に視線を向けた椛は驚愕した。そこに居たのは全身血だらけの王儀だったのだから。
「……ゴホッ、……何処見てやがるこの野郎…まだ、終わってねぇぞ…」
失われた右腕の傷を押さえ吐血した所を見ると、どうやら内臓にも相当な痛手を受けているのが分かる。
そ
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