第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
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―――石の巨人は粉微塵に粉砕される。
しかし文は違和感を感じていた。
何とも言えない手応えの無さがあるのだ。
警戒し周囲に視線を走らせた文の耳に椛からの警告と、それとは別の声が流れ込んで来たのはほぼ同時だった。
「文ッ!!上ですッ!!」
「やってくれたなッ!天狗ッ!!」
ほんの僅かに椛の警告が早かった事が幸いし、迫っていた王儀の一撃を文は何とか防御する事が出来たが、防ぎきれず地上目掛け叩き落とされる。
「ッ!?」
墜落寸前何とか体制を直した文は地面すれすれを滑るように疾駆し、再び空へと舞い戻ろうとした瞬間――――
「逃がさねぇぞッ!!」
すぐ背後に王儀が迫っていた。
文は襲い来る拳?を寸前で躱し、持ちうる全力で空を翔る。
天狗本来の疾さに加え文が保有する『風を操る程度の能力』での補助により、『速度』の領域で彼女に対抗出来る者は居なかった――――居ないはずだった。
最高速度に達した文の速度に追随する形で王儀が迫って来る。
文は王儀を引き離す為に速度を落とす事無く戦場を縦横無尽に翔け回るが、彼との距離を開く事が出来ない。
引き離せないのなら、と文は振り向きざまに空を切る様に腕を一閃させる。
するとその動きに合わせ風が変則的な流れを生み、瞬時に三枚の風の刃と化した。
三様の軌道で王儀に向けて疾駆しする風刃――――だがその鋭利な兇刃は彼に触れる寸前紐解かれたかの様に霧散してしまう。
「なッ!?」
「くたばれぇェェェッ!!」
その状況に驚愕し動きが鈍った文に向け、疾風と化した王儀の拳が迫り、文は羽団扇を楯代わり構え更に風を前方に逆巻かせる事で防ごうとしたが――――
風の障壁はまるで綿毛の様に霧散し、文は王儀の放った一撃を直に受け止める形になった。
羽団扇で防げはしたが、その衝撃は重く文は打ち出された砲弾の如く吹き飛ばされる。
それでも何とか体制を直した文は、迫っていた王儀の第二?を躱すと再び王儀との距離を取る為、最大速度で空を疾駆し王儀もそれを追う形で全力で飛ぶ。
神速の領域で行われている二人の勝負に他の者は手を出す事が出来ず…中には気付く事すら出来ない者も居た。
空中を翔けていた文が突如その高度を下げ、森林地帯へと飛び込んだ。
そして雑立する木々の間を正に縫うかの様に飛翔して行く。
確かに障害物が増えれば相手への撹乱になるだろう――――だが今回は相手が悪かった。
事もあろうに王儀は木々を避けもせず、粉砕しながら直進してくるのだ……速度を落とす事無く。
天狗と鬼の基本的身体能力の差が如実に現れる状況だろう。
文と王儀の距離は徐々に埋まり、王儀が腕を振りかぶ
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